アモン・アマースのヨハン・ヘッグといえば、低くうなるデス声と、ヴァイキングの物語を思い浮かべる人が多いでしょう。
その声には一貫した存在感がありますが、歌の作り方までずっと同じだったわけではありません。
初期の勢いに任せた叫びから、言葉を伝える歌へ。
さらに、登場人物の感情を演じ分け、静かな声で次の激しさを際立たせる歌へ。
歩みをたどると、よく知られた低い声で、何を選べるようになったのかが見えてきます。
叫ぶ勢いを、続けて歌える声へ変える
ヨハンがデス声に出会ったのは18歳の頃でした。
友人のバンドを通してデス・メタルを知り、冗談でヴォーカルへの立候補を口にした後、ヨーロッパの「The Final Countdown」に合わせてうなっていた声を聴かれ、オーディションに誘われます。
初めから今の歌い方を設計していたというより、身近な音楽の場から歌う役割へ入った人です。
初期の自分を振り返るヨハンは、制御しきれない叫びが多かったと話しています。
声が後に深くなったことも、当時の切迫した歌い方との違いとして捉えていました。
強い感情を出せても、その出し方が一つだけでは表現の幅が限られる。
そこが、歌い方を見直す出発点になります。
若い頃には、ステージで自分の声が聞こえないまま、できるだけ大きく歌って声を酷使した経験もありました。
2011年には、声の変化を単なる消耗ではなく、技術を変えてきた結果だと説明しています。
他の歌い手の助言を取り入れつつ、自分で試して合う方法を探したのです。

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この変化は、荒々しさを取り除く作業ではありません。
毎回の勢いに声を預ける段階から、荒々しい音色を歌の中で扱う段階へ進むことでした。
大きな音を出したという実感と、聴き手へ届く歌になったという実感は、必ずしも同じではないのです。
言葉が伝わるように、曲の中の声を組み立てる
2008年の『Twilight of the Thunder God』までの変化について、ヨハンは言葉を明瞭にすることを目指してきたと話しています。
ただ叫ぶのでなく歌うこと、曲に合う声を選ぶこと。
アルバムごとに歌い方を作り直し、歌と楽器のアレンジを一緒に考える姿勢が育っていました。
2013年の『Deceiver of the Gods』では、曲を映画に見立て、登場人物に何が起きるのかを想像して歌詞を作ったといいます。
音楽から浮かぶ場面に言葉を合わせる方法です。
単に神話の名前を並べるのでなく、曲の時間の中で出来事が進むように考えていました。
同作の「Hel」では、メサイア・マーコリンを迎えています。
ヨハンは、もう一つ違う声が入れば曲が良くなると考え、彼に参加を頼んだと説明しました。
自分の声で押し通すだけでなく、異なる歌い手との対照も、物語を作る手段になっています。
後に本人は、イェンス・ボグレンとの制作で言葉の運び方を学び、アンディ・スニープにはグロウルの高さや調子を広げる手助けを受けたと振り返っています。
低いうなり声の中にも、動かせる要素がある。
その探求が、次の物語性の強い作品につながっていきます。
『Jomsviking』で、登場人物の感情を声にする
2016年の『Jomsviking』は、一人の男の恋と追放、復讐を追う物語です。
ヨハンは、映画の音楽を作るように、歌と演奏でその感情を強める必要があったと話しています。
「Wanderer」には、逃亡する人物の孤独や絶望があり、「At Dawn’s First Light」には襲撃の激しさがあります。
前者の語るような表現と、後者の攻撃的な歌は、同じ主人公でも置かれた状況が違うために選ばれたものでした。
重い声なら、どんな場面にも同じように合うわけではありません。
行き先を失った人物と、戦いへ向かう人物では、言葉の急ぎ方も感情の向きも変わる。
このアルバムでは、声の強さ以上に、声が誰のどんな時間を表すのかが前へ出ています。
物語のある曲でも、歌詞がすぐ形になるとは限りません。
ヨハンは後に「The Way of Vikings」を振り返り、内容は決まっていても書けず、曲を繰り返し聴いた末に一行が浮かび、そこから全体がつながったと話しています。
筋書きを説明する文章と、曲の中で動く言葉は、別に作り込む必要があったのです。
『Berserker』では、静かな声で激しさを際立たせる
2019年の『Berserker』では、一枚を貫く物語から離れ、曲ごとに違う題材を扱います。
本人は、着想が様々な方向へ向かっていたため、再び一つの物語にまとめることは自然ではなかったと説明しました。
歌唱では、短い部分にクリーンな声を取り入れています。
ヨハンが狙ったのは、サビを全面的にきれいな歌へ変えることではなく、その後の展開を際立たせることでした。
言葉の区切り方や曲のリズムへの入り方も試しながら、従来の歌を土台に選択肢を加えています。
「Into the Dark」では、ロキの物語を通して、人が自分の暗い面と向き合うことを描きました。
神話が、外の敵と戦うためだけでなく、内側の葛藤を歌うための言葉にもなっています。
静かな部分があると、続く荒い声の重さが違って感じられます。
ずっと強い声を出す代わりに、曲の中へ段差を作る。
ヨハンの表現の広がりは、クリーンな声を使ったという事実だけでなく、それをどこへ置いたかにあります。
違う声と向かい合い、聴き手へ開く
ヨハンの言葉の伝わりやすさは、共演相手にも評価されていました。
2018年にサクソンの「Predator」へ招いたビフ・バイフォードは、何を歌っているか分かることが、彼を選んだ大きな理由だったと話しています。
深い声の迫力と、言葉が残る歌を両立しているのです。
2022年の『The Great Heathen Army』では、今度はアモン・アマース側がビフを迎え、「Saxons and Vikings」を作ります。
ヨハンによれば、二人で歌うという発想を先に決め、その対照を前提に歌詞を発展させました。
有名な歌手を呼ぶことより、曲に必要な役割があることが先だったのです。
同じアルバムの「Heidrun」については、観客が楽しめる曲として、バンド自身も制作を楽しんだと話しています。
また「Find a Way or Make One」には、困難にぶつかっても道を探すという、時代を越えて受け取れる考えを込めました。
歌の人物が遠い時代にいても、聴き手が受け取る感情まで遠いとは限りません。
怒りや決意、楽しさを共有できる言葉があることで、デス声は物語を伝える声にも、客席とつながる声にもなります。
『The Allfather Awakens』で、静けさの中の重さを探す
2026年10月に発表した『The Allfather Awakens』では、その選択がアコースティックな「Upphaf」にも広がります。
作品は二度の録音期間に分けて制作され、同曲はバンド初の全面的なアコースティック曲として発表されました。

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ヨハンは、前作では重いアルバムを目指す意識が強かったのに対し、今回は浮かんだ着想を生かし、それぞれの曲を良くしようと考えたと話しています。
長く温められていた「Upphaf」の案も、その中で形になりました。
この曲では、最初からクリーンな歌を完成形と決めていたわけではありません。
試してみると丁寧すぎると感じ、語りとうなりの間に声を置く方向へ進みます。
焚き火を囲んで世界の始まりを語るような場面が、歌の手掛かりになりました。
ヨハン自身も、冒頭は物語を話すように始め、終わりで高さが上がると本来のグロウルへ入る、と説明しています。
静かな曲だから別人のような声になるのではなく、慣れ親しんだ声のどこまでを静けさの中で使えるかを探ったのです。
荒々しい叫びを制御し、言葉を曲へ収め、登場人物や共演者との関係に合わせて声を選ぶ。
その積み重ねの先に、静かな語りとグロウルをつなぐ表現があります。
ヨハン・ヘッグの変遷は、低い声を手放した歴史ではなく、その声で伝えられる場面を増やしてきた歴史です。
言葉の明瞭さや声の対照を作る方法は、ヨハン・ヘッグの歌い方で掘り下げています。

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