ヨハン・ヘッグの歌い方|低いうなり声で、言葉と物語を届ける理由

ヨハン・ヘッグ(2022年掲載、写真:Alessandro Bosio/Pacific Press/LightRocket via Getty Images) シンガー
ヨハン・ヘッグ(2022年掲載、写真:Alessandro Bosio/Pacific Press/LightRocket via Getty Images)

ヨハン・ヘッグの歌を、低く怖い声という印象だけで捉えると、聴き逃してしまうものがあります。
言葉が残る明瞭さ、曲の中での声の置き方、語りかけるような静けさ。
アモン・アマースの物語を支えるのは、音色の迫力と、その音色を使い分ける判断です。

グロウルは、低くうなるような荒い歌声を指す言葉です。
ヨハンの場合、その響きを保ちながら、登場人物や曲の展開に合わせて言葉の運び方を変えています。
具体的な曲から追うと、強烈な声にも細かな表情があることが分かります。

低い声の迫力と、言葉が分かることを両立する

サクソンのビフ・バイフォードは、「Predator」にヨハンを迎えた理由として、歌っている言葉が分かることを挙げています。
自分の高い声では十分な硬さが出ないと感じた部分へ、ヨハンの声を求めたのです。
低さだけを競うのでなく、重さと言葉の伝わり方を一緒に選んでいたことが分かります。

声の表面が荒くても、言葉がどのまとまりで進むかが分かれば、歌の意味を追いやすくなります。
一音ずつ滑らかに伸ばす歌とは違っていても、短い言葉を置く位置や、続けて運ぶ言葉の流れに、その人らしさは出ます。
ヨハンを聴くときは、声の低さに加えて、フレーズがどこで一つの形になるかに注目したいところです。

本人は、荒い声でも曲に合う歌い方を選び、言葉を明瞭にすることを目指してきたと話しています。

自分の声を聞き、余分な力任せを減らす

ヨハンは若い頃、自分の声が聞こえないステージで、声量を上げ続けてしまったと振り返っています。
歌い方を整えるうえで、自分がどんな声を出しているかを聞けることは、本人が重視してきた条件でした。

マイクの扱いにも好みがあります。
音を拾う部分を手で包み込む持ち方について、彼は余計な歪みが加わり、歌い手が似た音になってしまうと感じるため、好まないと話しています。
もともとの声の個性を、さらに歪ませて作り替えたいわけではないのです。

ヨハン・ヘッグ(2013年掲載、写真:Charles Epting)
ヨハン・ヘッグ(2013年掲載、写真:Charles Epting)。
画像出典:画像掲載元

荒く聞こえる声だからといって、すべてを声量や機材の歪みで説明することはできません。
歌い手が出す音と、マイクを通って客席へ届く音には、別々に整える部分があります。
ヨハンの発声を考えるときにも、録音で聞こえる重さを、そのまま喉へ加えている力の大きさだと置き換えないことが大切です。

2013年には、ブルース・ディッキンソン、トム・アラヤ、レミーらを尊敬しながら、自分の良さが出る歌い方を確立したかったと話しています。
荒い声の種類を一つ覚えることより、自分の声として成立させることが目標だったのです。

同じグロウルでも、人物の置かれた場面を変える

『Jomsviking』の「Wanderer」と「At Dawn’s First Light」は、声の使い分けを考える好例です。
ヨハンは、前者には孤独と絶望、後者には襲撃の攻撃性が必要だったと説明しています。
語るような声と、前へ迫る激しい歌が、物語の場面を分けています。

ここでは、声の高さを変えるだけで役を作っているわけではありません。
言葉を急いで運ぶか、語りとして聴かせるかでも、人物の切迫感は変わります。
同じ低い響きの中で場面を切り替えられるから、長い物語にも感情の違いが生まれるのです。

「Hel」でメサイア・マーコリンを迎えた際も、ヨハンは違う声が入ることを曲の利点として考えていました。
自分が歌わない声にも役割を渡すことで、一人の音色だけでは作れない対照が生まれます。

「Saxons and Vikings」では、サクソンのビフ・バイフォードが歌い、同じバンドのポール・クィンとダグ・スカーラットもギターで参加しています。
ここで聞こえる別の歌声を、ヨハン本人の声の切り替えだと思わず、二人が向かい合う構図として捉えると、曲の面白さがはっきりします。

きれいな声は、次の荒い声を強くするためにも使える

『Berserker』でのクリーン歌唱について、ヨハンは、曲の勢いがいったん下がり、また上がるところへ入れたと説明しています。
静かな箇所を少し柔らかくすることで、その後がより強く響く。
二曲の小さな部分に、そうした役割を持たせました。

ヨハン・ヘッグ(2019年掲載、写真:B. Treimer)
ヨハン・ヘッグ(2019年掲載、写真:B. Treimer)。
画像出典:画像掲載元

これは、荒い声を出せるか、きれいな声を出せるかという二択ではありません。
一曲の中で、次に何を強く感じてほしいかを考えて声を置く方法です。
最初から最後まで同じ強さが続くと違いは小さくなりますが、いったん質感が変われば、戻ってくる声の荒さが輪郭を持ちます。

本人は同作で、言葉の区切り方やリズムを探し直したとも話しています。
曲の区切りごとに、歌の入り方を考える余地があるのです。

短く力のある歌の例として、ヨハン自身が気に入っていたのが「Shield Wall」でした。
端的で強く、サビが良い曲として、ライブで演奏することを楽しみにしていたといいます。
低い声を長く引っ張る迫力だけでなく、短い曲の中に覚えやすい中心を作ることも、彼の歌の魅力です。

「Upphaf」では、語りとグロウルの間を使う

2026年の「Upphaf」は、アコースティックな伴奏の中で、声の重さをどう残すかを試した曲です。
ヨハンはきれいな声も試しましたが、欲しい重さには合わないと感じました。
そこで、物語を語る声とうなりをつなぎ、終盤では本来のグロウルへ進む形を選んでいます。

歌詞は、北欧の古い詩『巫女の予言』の冒頭五節を英訳したものです。
本人は当初、それを歌の旋律を探すための手掛かりとして使いましたが、言葉と曲がよく合うと感じたと話しています。
声の出し方だけを先に決めたのではなく、言葉の流れが歌の形を見つける助けになりました。

この曲の案は、ギタリストのオラヴィ・ミッコネンが長く持っていたものでした。
いつものエレクトリックな編成に押し込むと合わなかったリフを、アコースティックのまま生かしたのです。
声の選択も、伴奏が何を求めているかと切り離せません。

荒い声を少し引けば、急に普通のバラードになるという単純な関係ではありません。
話す声に近づく部分と、うなりが前へ出る部分をつなぐことで、静けさの中にも緊張が残ります。
「Upphaf」は、激しい伴奏がなくてもヨハンの声が物語を支えられることを示す曲です。

ヨハン・ヘッグの歌い方を特徴づけるのは、低い声を出し続けること以上に、その声で言葉を伝える工夫です。
人物の状況に合わせて運び方を変え、別の歌声と対照を作り、静かな声から荒い声へ進む。
その選択を追うと、デス声の迫力の奥にいる語り手が見えてきます。

初期の叫びから、こうした選択肢を広げてきた歩みは、ヨハン・ヘッグの歌唱変遷でたどっています。

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