LANAと共演した7は、彼女のハスキーな声に惹かれると話しています。
輪郭のはっきりした個性がありながら、その声は、強いラップにも、気持ちをほどくような歌にも使われる。
ざらつきを含む声の質感と、歌い回しの柔軟さを分けて見ると、LANAの魅力が捉えやすくなります。
声色を一言で表すならハスキー。
けれども、曲の中では、言葉をリズムとして刻む場面も、旋律に感情を乗せる場面もあります。
その違いは、声を強く出すか、弱く出すかだけでは説明しきれません。
ハスキーな質感と、こぶしは別の持ち味
LANAのバックDJを務めるDJ YANATAKEは、彼女の持ち味として、ハスキーボイスと、トラップの上で生きるこぶしを挙げています。
LANA自身も、普段の話し声からハスキーであることを認めています。
歌うときにすべての音を荒く押し出して、あの質感を作っていると考えるのは違うでしょう。
声の質感と、節回しは分けて聴けます。
ハスキーさは、声に触れたときの手触りのようなもの。
こぶしは、旋律の中で音を細かく動かし、一つの言葉に表情をつける歌い回しです。
同じ声色のままでも、まっすぐ伸ばすか、音を動かすかで、言葉の届き方は変わります。
LANAは幼い頃、母と入浴しながら、美空ひばりや沖縄の民謡を含む歌に親しんでいました。
「愛燦燦」や「涙そうそう」、ミュージカル『アニー』の「Tomorrow」も身近な曲です。
家族と歌い、歌い方を教わる時間が、今の活動より先にありました。
新しいビートに乗る歌の中へ、そうした節回しが入ってくる。
LANAの声の面白さは、音色の個性に加えて、旋律を動かす感覚にもあります。
ハスキーという言葉だけで済ませると、この動きが見えなくなってしまいます。

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「PULL UP」で、言葉の速さと旋律を切り替える
「PULL UP」は、速いフロウとメロディーを組み合わせた曲です。
LANAは自分の声を生かして、このビートでできることを見せようとしました。
フロウは、言葉をビートのどこに、どの長さで置くかという流れです。
短く続く言葉が前へ進む力を作り、音の高さを持った旋律が加わると、歌として追いかけられる線が生まれる。
この二つを行き来できるから、ラップの勢いを保ちながら、声そのものを印象に残せます。
聴くときは、速さだけに注目するより、言葉の並びが旋律へ移るところに耳を向けると、その幅が分かりやすくなります。
「Icy Tale」には、別の対照があります。
ハスキーなラップの部分と、かわいらしさのあるサビを行き来する曲です。
曲名は日本語の「愛してる」と音が似ていることから生まれました。
LANAは、曲に合う音に応じて、日本語と英語を使い分けることも話しています。
言葉の意味だけでなく、口から出したときの響きも曲の材料になる。
その上で、ラップとサビの表情が変わるため、一つの曲の中に強さと甘さを置けるのです。
「99」と「For bbys」で、旋律に残す気持ち
「99」は、ラップとR&Bを行き来する歌唱で、過去の経験と、聴き手への思いをつないでいく曲です。
ストリングスの響きも加わり、経験を言葉で語る部分から、その先の願いへと歌が続きます。
出来事を並べる言葉と、気持ちを託す旋律の両方があることが、この曲の温かさにつながっています。
「For bbys」では、ギターとストリングスの柔らかい響きの中で、内側の気持ちを歌います。
アタックの強いビートを乗りこなす曲と比べると、旋律と声の表情へ目を向けやすい曲です。
LANAは、旋律を作るとき、トラックを聴きながらまず声を乗せていくと話しています。
最初から専門用語で設計するより、歌ってみて、自分で確かめる。
歌う行為そのものが、曲を作る方法にもなっています。
言葉を速く運ぶ曲だけを聴いていると、旋律を自分の声で探す人だという側面が見えにくくなります。
「For bbys」のような曲は、その感覚に近づける一曲です。
「明るい部屋」で、言葉以上の感情を声に乗せる
LEXと歌った「明るい部屋」の制作に関わったSTUTSは、最初の録音に立ち会っています。
その場で印象に残ったのは、二人の声と、旋律につける感情のニュアンスでした。
難しい言葉を使わず、断片的な言葉でも情景が浮かぶ。
声の表情が、歌詞だけでは説明しきれない気持ちを伝えていたのです。
これは、歌詞をはっきり発音することとも、音程を合わせることとも、少し違う働きです。
同じ言葉でも、どんな感情を伴って歌うかによって、その人が言っている言葉として届く。
制作側が評価したのも、旋律に乗った声から受け取れる、二人ならではの感情でした。
「翼の折れたエンジェル」では、こぶしが歌の表情になる
「翼の折れたエンジェル」のカバーには、こぶしを効かせた歌い回しが表れています。
昔のヒット曲を選ぶだけでなく、自分の声と節回しで、その旋律を歌う。
LANAの持ち味を、ヒップホップとは違う入り口から捉えられる曲です。
この曲は、LANA自身が母から教わり、悩んでいた時期に支えられた歌でもあります。
本人は、自分が救われた曲を、これからの世代にも届けたいと話しています。
カバーには、曲を知っていること以上の、個人的な関係がありました。
こぶしは、歌に一律に貼りつける飾りではありません。
親しんだ旋律を自分の声で歌うとき、その人の節回しとして現れる。
トラップの曲で語られてきた持ち味が、このカバーでは別の曲調の中に置かれています。
大きなサウンドの中でも、フレーズの感情を中心に置く

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「Truth in the dark」は、重い低音、シンセサウンド、ギターを伴うミディアムテンポの曲です。
その中でLANAの歌は、日本語のフレーズにリズムのうねりと強い感情を与えています。
曲の迫力を、伴奏の大きさだけに預けていません。
2026年8月の代々木公演でも、ハスキーな声の伸びやかさと鋭さ、フレーズに込める感情が歌の特徴として表れていました。
一方、アンコールの「it’s okay」では、最後のサビを観客とアカペラで歌っています。
大きなステージでも、音を重ね続けるだけでなく、声を分かち合う場面がありました。
「PULL UP」の言葉の流れ、「For bbys」の旋律、「翼の折れたエンジェル」の節回し。
LANAの歌は、同じハスキーな声を使いながら、曲ごとに違う表情を見せます。
その声が何をしているかまで聴くと、強い人という印象の奥にある、細かな歌の選択が見えてきます。
作品の中でこうした表現がどう広がったかは、LANAの歌声の変遷でたどっています。

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