Liyuuの歌声をたどると、曲に向き合うときの余裕が、少しずつ声の表情へ変わってきたことが分かります。
最初は日本語の意味を調べ、リズムを覚え、自分の歌として成立させることに懸命でした。
やがて録音の場で自分から提案するようになり、以前の曲にも新しい気持ちを込められるようになっていきます。
かわいらしい声の印象を残したまま、その声で語れることが増えてきた歩みです。
「Magic Words」以前――文字を音に置き換えて歌っていた頃
上海で育ったLiyuuは、高校生の頃から日本のアニメソングをカバーして投稿していました。
当時は日本語の文字が分からず、アルファベットに書き起こして歌っていたといいます。
好きな歌を自分でも歌いたいという気持ちが先にあり、言葉を読む力は、あとから追い付いてきたのでした。
2020年1月22日には「Magic Words」でソロ歌手としてデビューします。

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ただ、好きな歌手の録音を手本にできるカバーと、まだ誰の歌にもなっていないオリジナル曲とでは、向き合い方が違います。
「Magic Words」では、知らない単語の意味を一つずつ調べ、複雑なリズムを繰り返し練習しました。
Liyuuが当時感じていたのは、参考になる歌唱をなぞるだけでは、自分の曲を完成させられないという難しさでした。
この出発点を知ると、後年の変化を、単に歌に慣れたという一言では片付けられなくなります。
言葉の音を再現すること、その意味を理解すること、さらに自分の感情として届けること。
彼女は、それぞれの課題を重ねて進んできたからです。
2020年、「カルペ・ディエム」で柔らかい声を新しい曲調へ
同年の「カルペ・ディエム」では、クールな曲調とラップに挑戦します。
それでも、柔らかさは自分の声に自然と残るものだとLiyuuは捉えていました。
強い曲のイメージに合わせて、持ち味まで消してしまう必要はない。
デビュー時に探していた自分の歌声を、新しい曲の中でも使っていこうとする姿勢が見えてきます。
サビの高さも課題でした。
仮歌に合わせて練習した段階では難しく感じたものの、高いところを苦しそうに聞かせないよう工夫し、録音では手応えを得ています。
もともと好んでいた電子的なポップスの要素を、自分の作品に取り入れられる喜びもありました。
新しい挑戦は、憧れる音楽へ自分の声を近づけていく時間でもあったのです。
2021年、Liella!の活動とともに変わった録音の姿勢
大きな転機になったのは、『ラブライブ!スーパースター!!』の唐 可可役、そしてLiella!として歌う経験でした。
2021年のLiyuuは、初期には自分の表現を何度もスタッフに確認していたと振り返っています。
さまざまな曲を歌ううちに気持ちを開いて歌えるようになり、曲に合う表現を自分で判断できる感覚が生まれました。
歌の正解を外から教えてもらうだけでなく、自分から方向を示せるようになる。
この変化は、声の高さや大きさの比較よりも、彼女の成長を具体的に伝えます。
同じかわいらしい曲を歌っていても、声をどう使うかを選ぶ人が、本人になっていったのです。
「Endless Vacation」の録音でも、Liyuuは歌い方の案を自分から伝え、仮歌にあった短い声の装飾を自分なりに変えています。
見本を出発点に、自分の表現を作る余裕が生まれていました。
2022年の『Fo(u)r YuU』――得意な表情の外へ
最初のアルバム『Fo(u)r YuU』では、かわいさ、クラブ、ロック、バラードという異なる方向へ歌を広げました。
バラードは、本人にとって昔から親しんできた音楽でもあります。
聴き手には新しい姿に見えても、すべてが突然生まれた好みではありません。
これまで表に出ていなかった一面を、自分の曲として見せる機会でもありました。
「BLUE ROSE」では、受け取った仮歌をそのまままねても、相手の良さも自分の良さも出ないと感じました。
「カラフルホライズン」も、最初はかわいさが幼い印象へ寄りすぎ、歌い方を調整しています。
曲のジャンルを増やす過程で、自分の声に何をさせると曲に合うのかを、具体的に試すようになっていたのです。
かわいい歌を得意とすることと、かわいい曲なら何でも同じ声で歌えることは違います。
この時期には、持ち味を保ちながら曲ごとの行き過ぎを直す、細かな判断が見えるようになりました。
変化は、声の個性を交換することより、その個性を扱う精度に表れています。
2023年の『koii』で生まれた、録音前に考える余裕
その間の変化をつなぐのが、2022年の「TRUE FOOL LOVE」です。
以前は自分の声で録った完成形を想像できず、不安があったLiyuuも、この頃にはスタジオへ入ると、うまくいくと思えるようになりました。
準備した案を当日さらに調整し、同じ言葉が出てきても、前後の歌詞に合わせて表情を変えています。
彼女が目指していたのは、話しかけられているように内容が伝わる歌でした。
『koii』を制作した頃、Liyuuは前作との違いをはっきり言葉にしています。
最初のアルバムでは、その日に歌う曲と向き合うだけで精いっぱいだった。
今回は準備をして録音へ入り、ディレクターと話しながら別の案を出せる余裕ができたといいます。
自分の声が入った曲を届けることから、曲の物語へ聴き手を誘うことへ、目指す完成度も変わっていました。
これは、失敗しなくなったという話とは少し違います。
別の歌い方を考えられるからこそ、いったん録った声を選び直すこともできる。
2021年に生まれた判断への自信が、作品を作る現場で具体的な提案につながった、と捉えられます。
『Soaring Heart』では、一曲ごとの感情を広げる
2024年の『Soaring Heart』では、Liyuuは曲ごとに異なる感情を届けようとしました。
デビュー直後は感染症の流行によって活動が止まり、最初のアルバムの頃にも新人という感覚が残っていたといいます。
そこから二年を経て、自分の変化を作品へ出したいという思いが強まりました。
渡航の制限が緩み、歌を届けに行ける場所が広がったことも、表題曲へ込める気持ちにつながっています。
例えば「CuteBit」では、気分が高まると細くなりやすい声を調整しました。
曲がかわいらしいからこそ、歌まで幼い印象へ寄せすぎない。
得意な方向にも加減が必要だと理解しているところに、この時期の余裕があります。

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作品の幅が広がるほど、明るく弾む声だけでは伝え切れない場面も増えます。
どこで気持ちを前に出し、どこで落ち着かせるか。
録音前の準備で得た余裕は、こうした小さな違いを一曲ずつ考えるために使われるようになりました。
2025年の舞台と、昔の歌詞が違って感じられる現在
2025年9月の東京公演では、初期の曲「魔法とガムと勇気」に、以前の初々しさとは違う落ち着きが表れていました。
「Soaring Heart」や「六等星」では、会場へ声を伸ばしていく姿も伝えられています。
古い曲と新しい曲を一晩に並べる舞台は、作品が増えたことと、その作品を歌う人が変わったことを、同時に示す場になっていました。
2026年にそのツアーを振り返ったLiyuuは、最初のアルバムの歌詞を今は当時と違う深さで理解できると話しています。
以前から歌っている曲でも、込める気持ちが変わる。
その一方、ライブの最初は今も緊張し、集中して歌ううちに落ち着いていくともいいます。
経験を積むことは、緊張が完全に消えることではありませんでした。
Liyuuの歌声の変遷は、柔らかい声を手放して別の歌手になる過程ではありません。
覚えた言葉を歌うところから、その言葉を自分がどう感じるかを声にするところへ進んできた歩みです。
デビュー曲に戻ったときも、歌詞は同じで、歌っている人の理解は同じではない。
その積み重ねが、かわいらしさの中に、以前とは違う余裕や感情を生んでいます。
曲ごとの声の選び方は、Liyuuの歌い方で掘り下げています。

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