towanaの歌い方|澄んだ声を、息・リズム・歌い出しでどう変えるのか

2022年のソロ曲「ベール」の取材に掲載されたTowana towana
2022年のソロ曲「ベール」の取材に掲載されたTowana

towana自身は、歌声を聴くときに、その中に含まれる息の感じにも耳を向けています。
ChouChoと共演した際には、自分に近い発声を感じながらも、相手の声にはより空気を含む柔らかさがあると話していました。

「snow scene」は、息を含んだ声を重ねる

この曲でtowanaが意識したのは、曲の雰囲気に合わせて空気を多く含む歌い方にすることでした。
歌声は16〜18トラックも重なり、低いコーラスには本人の声を加工した音も使われています。
高い部分はファルセットを想定した作りです。
一人が大きく張った声の厚みというより、違う高さの声が重なって生まれる広がり。
冬景色を描いた曲の厳かな空気は、息の質感と録音の重なりを一緒に捉えるとわかりやすくなります。

録音の印象には、声をどう収めるかも関わっています。
『World Atlas』では、マイクや機材を変えながら、声の空気感をより直接伝える試行錯誤を重ねました。
声の近さや柔らかさには、歌い手の選択と録音の両方が働いています。
「It’s a Popular Song」では、難しい歌を、力が抜けて聞こえるように歌いたかったとも話しています。

「虹を編めたら」は、細かい言葉の中で弾む

「虹を編めたら」は、テンポそのもの以上に速さを感じる作りになっています。
旋律が細かく動き、言葉が早口気味に入り、リズムも少し跳ねるためです。
towanaにも、その跳ね方が伝わるように歌う指示がありました。
音程を追うだけでは、曲の弾む感じまでは出てきません。
ひとつひとつの言葉をどんな流れで運ぶかまで、歌の表情になっているのです。

佐藤純一は、初期のゲストボーカルたちとライブをしたとき、リズムの面でtowanaが最もしっくりきたと振り返っています。
fhánaの曲には、ソウルの跳ね方とポップスやロックの感覚が混ざっています。
その伴奏に自然に入れることが、彼女の声がバンドの中心に置かれた理由のひとつでした。

2016年、ChouChoとの対談に参加したtowana(撮影:豊島望)
2016年、ChouChoとの対談に参加したtowana(撮影:豊島望)。
画像出典:画像掲載元

「現在地」では、うまく整えすぎない

「現在地」で目指したのは、若さや衝動が残るような歌です。
事前にエモやメロコアの参考曲を教わり、いつもよりバンドの歌い手らしく、こなれすぎない表現を選びました。
本人は、技巧を削る感覚が昔の歌い方へ戻るようで面白かったと話しています。
伴奏のドラム、ベース、ギターも、一緒に演奏して録っています。
その場で音を出すバンドの勢いに、歌も似合うように選んだ表現でした。

反対に「わたしのための物語〜My Uncompleted Story〜」では、いつもより可愛らしさを出す意識がありました。
歌詞の一人称やアニメの登場人物の雰囲気が、その選択につながっています。
同じ明るい声でも、衝動を表へ出すのか、言葉の人物像へ寄せるのかで、曲の中に立つ姿は変わります。

「Spiral」は、声質を生かして節回しを変える

「Spiral」の後半では、サビの旋律が展開するところにR&B的な歌い回しが加わります。
佐藤が面白がったのは、かわいらしい声質のまま、ソウルフルなうねりが出たことでした。
澄んだ声質を生かしたまま、旋律の運び方で違う表情を作れるのです。

ソロ曲「ベール」も、高音だけに注目せず聴きたい一曲です。
佐藤は新しい魅力を引き出すために作曲し、ミドルテンポの中で、華やかな高音に加えて低い声の響きも生きる曲になりました。
須藤優の編曲は、生楽器と電子音のバランスを取りながら、その歌を後押ししています。
急いで高音へ向かうのとは違う、声そのものに時間を渡す聴かせ方です。

「calling」と「夢」で違う、歌い出しの温度

「calling」では、休息と使命という主題に合わせ、大きな気持ちで歌おうとしました。
旋律の刻み方も大きく、細かな言葉を弾ませる曲とは、向き合う単位が違います。
一音ずつ忙しく表情を付けるより、長い流れの中で何を伝えるかを考える歌なのです。

「夢」では、その大きな歌への入り方自体が演出になっています。
ピアノを背にした語りから歌へ移る際、最初から全力で入るように指示されました。
徐々に声を盛り上げていくのではなく、語りが終わったところで一気に歌が始まる。
本人も、その温度差を面白く感じていました。
声の大きさだけでなく、直前に何を置くかによって、第一声が持つ力も変わります。

towanaには朗読への苦手意識もありました。
それでも、上手な朗読を目指すのではなく、歌う人が自分の声で語ることに価値があると受け止めると、取り組みやすくなったといいます。
歌に入る前の声にも、その人らしさを残す。
だからこそ、同じ人が次の瞬間に大きく歌い始める変化が生きるのです。

「Air」では、声を重ねて言葉の聞こえ方を変える

「Air」の間奏では、歌詞を何度も朗読した声が重なります。
同じ読み方を繰り返すのでなく、ニュアンスを変えて録り、編集して組み上げたものです。
楽器を録り終えたあと、もうひとつ何かが欲しいと考えた佐藤が、最後に加えた表現でした。
狙いは、歌詞の切なさや透明感を際立たせること。
言葉を一つずつわかりやすく伝える歌とは違い、いくつもの声が重なることで、声そのものの気配が前へ出てきます。

細かく作り込む曲がある一方、「city dream city」では、録音当日に歌詞が届きました。
早口で、速く、少し癖のあるポップな曲です。
towanaは、練習する時間が十分あれば、かえって同じ歌にはならなかったかもしれないと振り返っています。
声の表情には、時間をかけて整えた結果だけでなく、その場で言葉へ反応する勢いも残るのです。

2025年1月13日、HULIC HALL TOKYOで歌うtowana(撮影:笹原清明)
2025年1月13日、HULIC HALL TOKYOで歌うtowana(撮影:笹原清明)。
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細部を聴き分けながら、自分の声の使い道を探す

towanaは、昔から自分でも歌いたくなる曲を聴き、少し難しい歌を歌えるようになることを楽しんできました。
プロになってからは、好きな歌手が難しい部分をどう歌い、どこでファルセットへ切り替えるかを考えることもあるといいます。
他の人の声をそのまま借りるだけでなく、曲を成立させる細かな選択を聴き取っているのです。

実際の舞台でも、その選択は曲ごとに変わります。
2025年のツアー最終公演では、「風になって」の晴れやかでのびのびした歌に続き、「waltz for lily」ではゆっくりしたバンドの演奏に声を優しく重ねました。
息を含ませる、言葉を弾ませる、語りから一気に歌へ入る。
曲の気分に合わせて声の置き方を選べることが、towanaの澄んだ声を一色にしない理由です。

デビュー曲の再録、作詞、ソロ活動を経て表現が広がった過程は、towanaの歌声の変遷でたどれます。

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