兎田ぺこらの歌の歩みには、配信で親しまれている声を、音楽の中でどう生かすかという試行があります。
明るさや笑い声を曲に取り込み、バラードでは別の表情を見せる。
さらに、その歌を客席とのやり取りへ広げていく。
初期の思いと制作の具体例をたどると、声の個性を残しながら表現を増やしてきた姿が見えてきます。
2019〜2020年|歌が得意だったから、アイドルになったわけではない
2019年7月17日に初配信を行った兎田ぺこらは、ホロライブ3期生の一人です。
ゲーム配信を中心に活動し、語尾の「ぺこ」も含めて、自分だと分かる話し方を持っています。
ただ、初期の本人は、歌を得意とは考えていませんでした。
嗣永桃子に憧れ、ときのそらら先輩のようなアイドルを目指す中で、歌の練習に取り組んでいたのです。
初配信の自己紹介ラップも、ラップ好きだから選んだというものではありません。
印象に残ることをしたくて考え、自分の声で伴奏まで用意しました。
最初から完成した歌手像を見せるより、自分を覚えてもらうために声を使う。
その出発点を知ると、後の楽曲に台詞や掛け声が多いことも、突然現れた特徴ではないと分かります。
2021年|「ぺこらんだむぶれいん!」で、自分の歌を持つ
2021年1月に発表した「ぺこらんだむぶれいん!」は、初のソロオリジナル曲です。
畑亜貴が作詞、俊龍が作曲を担当しました。
アニメソングを数多く手がけた作家と組み、個人の名前やキャラクターと結びつく作品を持つことになります。
同年の『Bloom,』では、この曲を元気な歌声と跳ねる振り付けで披露。
続く、さくらみことの「ぺこみこ大戦争!!」では、二人の掛け合いも舞台の楽しさになりました。
一人で自分の曲を歌うことと、相手の声に応じること。
この時期から、声の個性を生かせる場は一つではありません。

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2022年|「いいわけバニー」で、台詞の奥にまっすぐな歌を置く
翌2022年1月には、2曲目の「いいわけバニー」を発表します。
制作を担当したのはナナホシ管弦楽団です。
本人は台詞中心の参考曲を挙げ、キャラクターへ強く寄せなくてよいと依頼していました。
ナナホシは配信を知り、その人らしさを生かす方向を選びます。
賑やかな曲調の中で、伝えたい部分はまっすぐに歌ってもらう。
台詞の面白さに、歌の素直さを組み合わせる発想でした。
声を休めた時期も経て、次の制作へ
2022年5月には、声帯結節を理由に休養を発表しました。
本人は、いったん休んで治してから戻るという意思を伝えています。
楽曲を増やす一方で、声を使う活動を休まなければならない時期もあったのです。
およそ1か月後には配信へ復帰し、回復を報告しました。
ただし、この休養を境に歌唱技術が変わったとまでは言えません。
体調の回復と、作品の中で声の表現を増やしていくことは、分けてたどる必要があります。
2023年|録音でも、自然な笑い声を出すために
「全人類 兎化計画!」では、笑い声の収録が課題でした。
普段と違い、録音では緊張して不自然になることがあったというのです。
前山田健一のディレクションを受け、歌う中で笑い声も自然に出るようになりました。
自分らしい、少し得意げな小悪党の雰囲気を出せたと振り返っています。
録音で自然に聞こえる表現を、一緒に探した転機でした。
同じ年には、Blue Journeyの一員として、別の曲調にも向き合いました。
9月の『夜明けのうた』では、白上フブキ、雪花ラミィとロック曲「ラブソングはいらない」を披露。
「不純矛盾」では、戌神ころね、姫森ルーナ、博衣こよりと、明るさに影も差すポップソングを歌っています。
自分を主役にした賑やかな歌だけでなく、複数の声で楽曲の世界を描く活動も進んでいたのです。
この公演では朗読も組み込まれ、終盤にはぺこらら5人の言葉から、全員で歌う「水たまり」へつながりました。
台詞が笑いを誘うだけでなく、物語を聴き手へ手渡す役割も持つ。
普段とは違う声の見せ方を考える機会になっていたと捉えられます。
初ソロライブ|盛り上げる声に、静かに伝える歌も加わる
2023年11月の初アルバム『うさぎ the MEGAMI!!』では、バラードも歌いたいという本人の希望が形になります。
アップテンポの印象に加えて、違う自分も見せたかったからです。
「キミと見たい景色」にある“キミ”は、ファンである野うさぎのみんな。
これまでとこれからへの思いを、歌で渡そうとしました。
12月6日の有明アリーナ公演では、後半にこの曲を配置。
言葉を丁寧に運ぶ繊細な歌唱が、新しい魅力を伝えました。
その後には「神っぽいな」や、コールで盛り上がる「昇天直前Love it LIVE」も続きます。
一つの公演の中で、歌の表情を切り替える構成になったのです。
「キミと見たい景色」アルバム収録版。

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2024年以降|自分らしさが、共演と客席への強みになる
2024年には、ハコス・ベールズとの「HIDE & SEEK ~なかよくケンカしな!~」にも参加しました。
ベールズが考えたのは、普段の二人にある、いたずらや競争の楽しさ。
相手のイメージだけでなく、声や歌い方にも似合う曲を作りたかったと話しています。
ここでも、ぺこらの個性が、共演曲を考える段階から生かされました。
2025年の『hololive 6th fes.』でも、「最強女神†ウーサペコラ」は大きな盛り上がりを生みました。
歌い出しの言葉で曲を察した客席が反応する。
初ソロライブで育てた曲が、その後の大きなステージでも共有されていたことが分かります。
2026年1月の3期生ライブでは、初日に自分の曲をメドレーで披露しながら、宝鐘マリンの「美少女無罪♡パイレーツ」もカバー。
明るい歌声と、普段の本人像とは少し異なる主人公との組み合わせも、見どころになりました。
自分の名前を歌う曲だけでなく、相手の作品を自分の声で届ける楽しさへ広がっています。
2日目の「ぺこぺこ!! チキンフィーバー☆」では、販売アナウンスを思わせる歌に合わせて、客席の左右の照明が切り替わりました。
歌の中の呼びかけが、会場そのものを動かす演出へつながったのです。
初期の自己紹介ラップにあった、声で楽しませたいという発想が、今は大きな客席とのやり取りにも生きています。
兎田ぺこらの変遷は、別人のような声へ変わったという話ではありません。
持ち味を曲の中で自然に出す工夫を重ね、その声を使える場面を増やしてきた歩みです。
笑わせる台詞、思いを届ける旋律、一緒に歌うための呼びかけ。
その違いに注目すると、アイドルとしての成長が、声の役割の広がりとして見えてきます。
曲ごとの声の使い分けは、兎田ぺこらの歌い方で詳しく扱っています。







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