「SMILEY」で笑顔を広げたイェナが、「Love War」では関係の冷えた恋人を歌う。
その間に変わったのは衣装や曲調だけではなく、自分の声からどんな表情を取り出すかでした。
さらに日本語のロック曲、電子音の中で弾む歌、初恋の物語へと、声を置く場所が広がっていきます。
ソロ活動の出発点から2026年の『LOVE CATCHER』まで、本人が選んだ表現の変化をたどります。
グループで見つけたラップから、一人で歌を担う道へ
イェナは2018年10月、IZ*ONEの一員としてデビューしました。
本格的な歌の練習を始めたのは、高校生で練習生になってからです。
月末の評価では、曲ごとにかわいさやかっこよさの見せ方を変えていたといいます。
歌が好きで得意でも、踊りながら歌うのは難しかったと、本人は練習生時代を振り返っています。
何度も挫折しそうになりながら、続けるうちに上達を感じられたことが支えでした。
後のステージで見せる快活さにも、歌と動きを同時に成立させるために積み重ねた時間があります。
グループのデビュー曲でラップを任されたとき、本人にはまだラップの経験がありませんでした。
似合うと勧められて取り組み、その面白さを知ったのです。
ラップの経験を重ねてからデビューしたわけではありません。
人から見いだされた声の使い道を、実際の表現へ育てていった時期でした。
2022年1月のソロデビュー作『SMiLEY』は、その自分を一枚で見せる作品になりました。
ヒップホップ、ロック、アコースティックなどを含む収録曲を、本人は自分そのものを入れたアルバムと説明しています。
表題曲「SMILEY」には、困難があっても自分のために笑おうという思いを込め、共演したBIBIも制作に関わりました。
明るさは、曲を聴く人へ働きかけるための表現だったのです。
「Love War」で、明るい声の印象から踏み出す
2023年1月の「Love War」では、その明るいヒーロー像から離れます。
愛情が残っていても傷つけ合ってしまう、関係の危うい時期が題材でした。
イェナ自身が作詞・作曲に加わり、Coldeが制作に参加。
BE’Oとの二人の声で、それぞれの側から同じ関係を歌う構成です。

画像出典:画像掲載元
この録音でイェナは、自分の強みである声色をさまざまに生かすため、一つひとつ変化を考えたと話しています。
発表時の歌唱も、ハスキーさと柔らかさの間にある響きや、歌とラップが近づいた自然な表現として評されました。
かわいい印象を引っ込めることで、もともとの声にあった別の質感を前へ出した転機といえるでしょう。
ただし、本人に不安がなかったわけではありません。
後に「Love War」を振り返った際には、こうした姿をファンが好むだろうかと心配していたと明かしています。
それでも支持が届き、当初予定していなかった授賞式での披露にもつながりました。
新しい表現を出してみることが、次の挑戦を支える経験になったのです。
日本語で歌う経験が、声の置き方を細かくする
2023年8月には、ちゃんみなを迎えた「SMILEY」の日本語版で日本デビューします。
音と言葉の収まりはよくても、「つ」の発音には練習が必要でした。
カップリングの「Déjà Vu」は、歌そのものの難しさもあり、「SMILEY」より苦労したと話しています。
同じ明るさを別の言語へ運ぶには、発音を含めて歌を作り直す必要がありました。
翌2024年2月の「DNA」は、日本オリジナルのロック曲です。
好きなアニメを思わせる歌詞とロックの音を、本人はデモの段階から気に入っていました。
自分の気持ちを表す歌として、自信をなくした人にも前へ進む力を届けたいと話しています。
日本語で歌うことが、自分を表す新しい曲との出会いにもなりました。
「Good Morning」で、自分の気持ちを皆で歌う力へ
その少し前、2024年1月の韓国盤『GOOD MORNING』では、自伝的な話や自分の感情をより多く盛り込んでいます。
表題曲の録音時には、サビを大勢で歌えばもっと活気が出ると考え、同じスタジオで先に録音していたTEMPESTへコーラスを依頼しました。
自分が励ます側に立つだけでなく、仲間の声も重ねて励ましを作る発想です。
アルバムには、傷んでいく関係を表す「Good Girls in the Dark」や、内側の思いを伝えたい「Damn U」、自伝的な「The Ugly Duckling」も並びます。
表題曲の前向きさだけで一枚をまとめず、うまく言えない感情も歌の中へ入れる。
「Love War」で示した暗い表情と、出発点の明るさが、作品の中で共に居場所を持つようになりました。
「NEMONEMO」から、恋を一つの物語として歌う作品へ
2024年9月の「NEMONEMO」では、電子音を使ったダンス曲へ進みます。
本人が親しんできたT-araやORANGE CARAMELのような、2010年代のK-POPの雰囲気を自分なりに表したかったといいます。
制作チームが長所も短所も研究してくれたため、曲を初めて聴いた段階から信頼して取り組めたという作品です。
ロックを離れることも、好きな音楽を自分の声へ取り込む一続きの挑戦でした。
2025年7月の『Blooming Wings』では、初恋から別れまでをたどる物語が中心になります。
「Being a Good Girl Hurts」は、弦の広がる音に柔らかく表情のある声を合わせた曲として紹介されました。
ソロツアーを経験したイェナは、新曲を持って再びファンに会うことを考え、細部まで時間をかけたと話しています。
一瞬で伝わるキャラクターに加え、曲が進むにつれて積み重なる感情にも焦点が移っています。

画像出典:画像掲載元
「Drama Queen」から始まり、「Hello, Goodbye」、Miryoを迎えた「Anyone But You」、最後の「364」へ。
アルバムは恋への憧れ、別れ、相手と距離を置く決意、親しい人への愛情へと場面を変えます。
同じ歌手が歌い続けるからこそ、場面ごとに気持ちが変わることが一枚のつながりになる。
明るい一曲の主役から、恋の経過を語る歌い手へと役割が広がった作品です。
共演する声を選びながら、その先の表情を探す
2025年11月の「STAR!」では、初音ミクと共演しました。
イェナが相手を思い浮かべたのは、曲の歌詞を考えていたときです。
ただ話題になる組み合わせを探したのではなく、この曲に合う存在として参加を望んだと説明しています。
共演は、一人では届かない表現へ進む楽しみでもありました。
2026年3月の『LOVE CATCHER』では、「Catch Catch」の弾む電子音へ。
前作の初恋や戸惑いから、愛情を自分なりに理解して近づく姿へ変わったと、本人は説明しています。
一方で収録曲には、別れの痕跡を扱うロック曲「Sticker」や、温もりを求めながら心を開ききれないバラード「April’s Cat」もあります。
快活な表題曲と、迷いのある感情を歌う曲を、一枚の中で共存させています。
こうしてたどると、イェナの歌声の変遷は、明るさを卒業して大人の声になる、という一直線の物語ではありません。
笑顔を届ける歌も持ちながら、関係の痛みや日本語の響き、共演者との違いを、自分の声で扱える題材にしてきた歩みです。
曲の中でどの言葉を明るくし、どんな声を組み合わせるのか。
その具体的な選択は、イェナ(YENA)の歌い方で掘り下げています。

こちらの記事もおすすめ

イェナの声色と発音、共演する声の選び方を具体例から掘り下げます。

GLASSY、LOVE ALL、Episode 25の制作背景と本人の言葉から、チョ・ユリの歌声の変化をたどります。

ユンナが作品の中で歌声の置き場所を選び直してきた歩みをたどります。



コメント