ZAQの歌い方・発声|低い声でも軽やかに、子音でリズムを変える

デビュー10周年を振り返る2022年11月の取材に掲載されたZAQの別カット ZAQ
デビュー10周年を振り返る2022年11月の取材に掲載されたZAQの別カット

ZAQの歌い方を考える手がかりは、声の高さに加えて、言葉をどのタイミングで出すかというところにもあります。
低めの音域で歌の軽やかさを求める曲があれば、子音を遅らせて、ゆったりした感覚を作る曲もある。
曲の中で欲しい表情に合わせて、声と発音を選んでいます。

「Dance In The Game」の低めの声、「ライアーヴェール」の柔らかい発音、そして「ドラマチック・オーバーレイ」の空気を感じさせる声。
本人が制作時に話した内容をたどると、声を強く出す以外にも、ZAQの歌を形にする具体的な選択が見えてきます。

「Dance In The Game」は、低めの声で軽やかに歌う

2022年の「Dance In The Game」について、ZAQは、音域を比較的低いところで作ったと説明しています。
自分の曲では高い声で歌うことが多い一方、この曲では低めの音域によって、声のシリアスな雰囲気が出ると考えていました。
曲の音域そのものが、歌の表情を選ぶための手段になっています。

そこで本人が心がけたのは、軽やかに歌うことでした。
低い声を使うことと、重々しく歌うことを、同じ選択にしていないのです。
声のシリアスさを生かしながら、ラテンジャズのリズムに合う歌を探しています。

アニメイトタイムズのインタビューでは、そのリズムの取り方に苦戦したことも話しています。
音域を低めにしたから簡単になった、という制作ではありません。
歌い手としては、曲のノリを作るための別の難しさがあったわけです。

この曲を聴くときは、声が低くなるところでも、歌の動きまで重くなっているかどうかを意識してみると、本人が求めた軽やかさを考えやすくなります。
どれほど高い音が出るかという聴き方に、低めの声でどんな表情を作るかという視点が加わります。
ZAQの発声を見るうえでも、この曲はその入口になるはずです。

また、曲の冒頭でこぶしを回す歌い方は、前作の「カーストルーム」を意識したものだと本人が説明しています。
低めの音域を選ぶこと、リズムに軽やかさを求めること、フレーズにこぶしを入れること。
それぞれの選択が、曲の中で組み合わされています。

「Dance In The Game」の低めの音域と歌の軽やかさを語る2022年8月の取材に掲載されたZAQ
「Dance In The Game」の低めの音域と歌の軽やかさを語る2022年8月の取材に掲載されたZAQ。
画像出典:写真掲載元

「ライアーヴェール」は、子音の出る位置を遅らせる

2026年の「ライアーヴェール」では、ジャズらしい歌い方を目指しています。
本人は、発音を柔らかくすることや、意図してリズムをずらすことを、歌唱で意識したと話しています。
言葉の輪郭をくっきり立てる歌い方から、別の表情を選んだ曲です。

その具体的な方法を、Billboard JAPANのインタビューで説明しています。
歌のメロディでは、子音を遅く発音するようにした。
拍にぴったり合わせて言葉を出す歌い方から、少し遅れて入る感覚を作るための選択でした。

ここでいう子音は、日本語の「か」や「た」などの、母音へつながる最初の音です。
本人が話しているのは、言葉の最初の音を出すタイミングを変えること。
単に声量を落とすという説明よりも、歌がゆったり感じられるように何をしたかが具体的にわかります。

音楽では、拍より少し後ろへ寄るような演奏や歌の感覚を、レイドバックと呼びます。
ZAQはこの曲で、歌のメロディをそうした感覚へ近づけていました。
発音とリズムを一緒に調整することで、歌の雰囲気を作っています。

この歌い方は、ディレクターからの提案を受けて形にしたものでした。
自分で作詞・作曲・編曲をするZAQも、録音の場では助言を受けながら、自分のボーカルを作っています。
曲を書いた時点のイメージに、実際に声を出して試した結果が加わっているのです。

ラップは拍に乗せ、歌の部分との緩急を作る

「ライアーヴェール」の中で、すべての言葉を同じように遅らせているわけではありません。
本人によれば、楽器が倍の細かさでリズムを刻むラップの部分では、しっかり拍に乗せて歌っています。
歌のメロディとラップで、言葉を出す位置を使い分けたのです。

伴奏が倍の細かさで刻まれることは、曲全体のテンポが倍速になることとは異なります。
その細かなリズムに言葉を乗せる部分と、ゆったりした歌の部分を組み合わせる。
ZAQが説明した緩急は、曲の中でのこうした切り替えから作られています。

この曲で注目したいのは、速く言葉を並べられることだけではありません。
言葉を拍の後ろへ寄せるところと、拍に合わせるところが、同じ歌の中にあることです。
本人が目指した歌のノリを、声の勢いだけでなく、発音のタイミングからも考えられます。

終盤のスキャットも、言葉とは違う形で声を使う部分です。
ZAQはこれが初めての挑戦だったと話し、1週間ほど動画やジャズの曲に触れて、その表現を学んでいます。
歌詞の意味を届ける部分に加えて、音節そのものを使って声を音楽にする部分も、この曲にはあります。

聴き比べるなら、歌のメロディからラップへ移るところと、最後のスキャットに注目してみてください。
歌詞を発音する声と、歌詞から離れて音節を歌う声を、どんなふうに曲の中へ置いているか。
そこに注目すると、ZAQが試した声の使い方を追いやすくなります。

「ライアーヴェール」の歌唱について語った2026年4月の取材に掲載されたZAQ
「ライアーヴェール」の歌唱について語った2026年4月の取材に掲載されたZAQ。
画像出典:写真掲載元

「ドラマチック・オーバーレイ」は、空気を感じさせる声を選ぶ

2025年の「ドラマチック・オーバーレイ」では、また違う声の選択があります。
『アルマちゃんは家族になりたい』のオープニング主題歌として、ZAQは声で可愛さを作ろうとしました。
リスアニ!のインタビューでは、力強さを前に出さず、芯の輪郭をぼかし、空気が多いように感じられる歌い方を説明しています。

この話からわかるのは、曲ごとに声の存在感の出し方を変えていることです。
低めの声でシリアスさを求めた「Dance In The Game」とは、曲に合う声の選び方が違います。
同じZAQの声でも、どんな響きや印象を前に出すかは、一曲ずつ考えられているのです。

ただし、「ドラマチック・オーバーレイ」の完成した声には、録音後の処理も関わっています。
本人は、声を3本ほど重ね、オートチューンも使うことで、ロボットを思わせる無機質な感じを作ったと話しています。
声の出し方と、録った声を重ねたり加工したりする方法を組み合わせた表現です。

空気を感じさせる歌い方を、ロボットのキャラクターに似合う音へ整える。
歌う段階で選んだ声が、重ね方や加工によって、作品の世界へ近づけられています。
完成した声の可愛さには、歌い手としての選択と、録音作品を作る側の選択が一緒に関わっているのです。

声の高さ、発音、録音の仕方を組み合わせる

ZAQの歌い方には、声の高さと歌の動きを分けて考える選択があります。
「Dance In The Game」では、低めの音域で声のシリアスさを出しながら、歌には軽やかさを求めました。
「ライアーヴェール」では、柔らかい発音と子音のタイミングを使い、歌とラップの緩急を作っています。

さらに「ドラマチック・オーバーレイ」では、空気を感じさせる声を選び、声を重ねる方法も使いました。
力強さを前へ出す歌も、輪郭を柔らかくする歌も、曲に合う声を選ぶための表現です。
その一曲ごとの選択を追うことが、ZAQの発声を知る手がかりになります。

声が太くなったと感じるなかで、以前の軽やかな発声を選び直した経験は、ZAQの歌唱変遷で扱っています。

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