ソンバーの歌には、傷ついた気持ちを一人で抱えるような親密さと、大勢で歌いたくなる開放感があります。
「back to friends」や「12 to 12」で広く知られたその歌も、初めから今の形だったわけではありません。
静かな曲を作り続けることへの行き詰まりがあり、ビートを変え、自分の声を置く場所を広げてきました。
寝室で録った声の近さを残しながら、どうやって大きなステージへ届く歌になったのでしょうか。
2022〜2023年、部屋で作った感情を曲にする
ニューヨークで育ったソンバーは、本名をシェーン・ブースといいます。
ラガーディア高校でクラシックの声楽を学ぶ一方、自分の部屋では曲を作っていました。
2022年に発表した「caroline」が広がり、音楽を仕事にする道が開けます。
翌2023年のEP『in another life』は、17歳のときに書いた曲をまとめた作品です。
大人になりかけた時期の感情を、そのまま残すことを本人は大切にしていました。
後から直したいかと問われても、当時の自分らしさがあるから変えたくない、と答えています。
制作は、部屋で考えた曲をプロデューサーのトニー・バーグと仕上げる形へ広がりました。
「weak」では、一人では完成できなかった二つのデモを持ち込み、組み合わせて一曲にしています。
実際の演奏者を迎えることで、頭の中にあった音も実現しやすくなったといいます。
若い声をそのまま記録する段階から、感情が届く曲の形を共同作業で整える段階へ進んだのです。
ここで変わったのは、年齢による声質というより、歌を完成させるまでの考え方でした。
気に入った断片を録れたところから、曲の終わりまで気持ちを運ぶ必要が生まれる。
のちの大きなサビを支えるのも、こうした曲全体への目配りです。
2024年、静かな歌にビートを持ち込む
「would’ve been you」のような、音数を絞ったゆっくりした曲を重ねるうちに、ソンバーは行き詰まりを感じ始めます。
そこで「makes me want you」では、もっとビートのある方向へ進もうとしました。
自宅で作った曲をネットに出し、反応を受けてバーグと完成させています。
この曲には、反響をまとった歌と、サビの軽いファルセットがあります。
ファルセットは、いわゆる裏声です。
相手への未練という題材は続いていても、声の周囲には体を動かすリズムが加わりました。
静かな曲を重ねていたところから、踊れる曲でも切なさを伝える方向へ踏み出しています。
テンポを変えるだけなら、悲しい曲を速く演奏することもできます。
ここで注目したいのは、軽い裏声の響きと、気持ちを前へ運ぶビートを同じ曲に置いたことです。
失恋を歌っているのに、音楽には浮き立つような動きがある。
この組み合わせが、次の作品群を理解する手がかりになります。

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2024年末、「back to friends」で歌を外へ開く
活動が広がっても、新曲が思うほど届かない時期は続きました。
レーベルの担当者は、ソンバーが落ち込んでいたところから、自分の作りたいものを作ろうと決めた、と振り返っています。
そうして2024年12月に発表されたのが「back to friends」でした。
初期の夢の中にいるようなバラードに対し、この曲は脈打つ伴奏と、思いを強くぶつける歌が前に出ます。
フルバンドで人前に立つ姿が浮かぶほど、声の向かう先が外へ開かれました。
バーグとの制作で学んだ、曲を最後まで作り込む姿勢も生きています。
よいサビだけで済ませず、その前後を含めて一曲にする経験が、感情の盛り上がりを支えていました。
ただし、人気が出たからといって、作り始める場所まで大勢のいるスタジオになったわけではありません。
ソンバーは、自分の弱い部分を言葉にするには一人の時間が必要だと考えています。
2025年にも、自宅でかなり形にしてからバーグのもとへ持ち込む方法を説明していました。
聴き手が増えるにつれて歌が遠くなるのではなく、一人で作った切実さを、大きな曲の中へ残していく。
初期とヒット後をつなぐのは、この制作の順序でした。
声の周囲に広がりができても、歌の出発点は身近な場所にあります。
2025年、失恋を歌う声の行き先が増える
2025年8月の初アルバム『I Barely Know Her』では、同じ失恋という題材から異なる表情が生まれています。
「Dime」は相手を求める気持ちを大きく歌う曲で、「Come Closer」には明るい高揚感があります。
終曲「Under the Mat」では、長めの展開に沿って物語を進め、スタジアムで響くようなポップとグラムロックの広がりを持たせました。
一つの寂しい声でアルバムを塗りつぶすのではなく、求める気持ち、浮き立つ瞬間、長く残る未練を、それぞれ違う曲の運動に乗せる。
初期の小さな編成からの変化は、音の豪華さ以上に、感情の見せ方が増えたところにあります。
ディスコのリズムを使った「12 to 12」は、本人にとっても意外な成功でした。
創作に気が乗らない夜、全く違うものを作ろうとして始めた曲だったからです。
すでにヒットしていた曲と違う方向を新しい聴き手が受け入れたことで、一つの型にとどまらなくてよいと感じたといいます。
「makes me want you」で試した、ビートのある曲に切ない声を置く発想は、ここでより広い聴き手に届きました。
静かな曲を捨てるという選択ではなく、同じ歌い手のまま、曲ごとに違う高揚のさせ方を持つようになったのです。

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ステージでも、初期の親密さを残す
2025年のボストン公演では、力のこもった歌と活発な動きで会場を盛り上げる一方、「caroline」はアコースティックギターを伴って演奏しました。
赤い照明の下で観客がライトを揺らす中、本人は16歳で曲を投稿した当時の怖さも話しています。
大勢を前にする公演の中に、初期の自分と向き合う時間を置いていたのです。
終盤の「12 to 12」では、ディスコボールと暖色の照明が会場を包みました。
一つの公演に、私的な歌の記憶と、全体を踊らせる終幕がある。
部屋で作った歌は、ステージ用の派手な曲に置き換えられたのではなく、観客と共有する方法を増やしていました。
2026年4月のコーチェラでは、レディオヘッドの「Fake Plastic Trees」で伸びやかなファルセットを披露しています。
ビリー・アイドルとの「Eyes Without a Face」では、ロック寄りの声の荒さを使う場面もありました。
自作曲の録音だけでなく、異なる曲を人前で歌う場でも、声の表情を見せる機会が広がっています。
2026年、自分自身へ向かう歌
2026年6月の「My Body Isn’t Ready」では、自分を受け入れる難しさや、相手にふさわしいと思えない不安を題材にしました。
恋愛の相手を追う歌から、自分の内側を見つめる歌へも関心が広がっています。
この曲は「undressed」の頃に書き始め、後に完成させたものです。
本人は、自分の容姿を好きになれない若い聴き手にも、その気持ちを分かち合う歌を届けたいと説明しています。
初期の声が古くなったから、別の声へ乗り換えたわけではありません。
静かな歌にビートを加え、大きなサビを作り、ライブでは裏声と荒さを異なる曲に使う。
ソンバーは、私的な感情をしまい込むようだった歌に、外へ届くための選択肢を増やしてきました。
2026年の新曲でも、その中心には、自分の弱い部分を歌にする姿勢が残っています。
その声を作る裏声、重ね録り、歪みの使い分けは、ソンバーの歌い方で曲ごとに掘り下げています。

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本人の言葉と作品からたどります。



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