さくらみこの歌唱変遷|元気に演じる歌から、ありのままの気持ちを届ける歌へ

2024年の初ソロライブのさくらみこ(撮影:高田真希子) さくらみこ
2024年の初ソロライブのさくらみこ(撮影:高田真希子)

さくらみこの歌には、客席と声を交わして盛り上がる楽しさがあります。
一方で、初アルバムの表題曲「flower rhapsody」では、自分の歩みを振り返る感情と向き合いました。
にぎやかな曲と、思わず胸がいっぱいになる曲。
この二つの表情は、どのように彼女の歌の中で結び付いたのでしょうか。

元気なキャラクターを歌で表すところから、自然な自分のまま歌うことへ。
初期の楽曲と2024年の制作時の経験、さらに2026年の本人の言葉から、歌い方の選択が広がった道筋をたどります。

「マイネームイズエリート☆」— MV(2019年)

自分の声を生かす方法を探していた初期

2018年8月に活動を始めたさくらみこは、当初、歌やダンスの経験がなく、自分の声に合う歌い方も分からなかったと振り返っています。
アイドルへの憧れがあっても、その声を歌の中で魅力として出す方法は、最初から決まっていたわけではありません。

最初のオリジナル曲「マイネームイズエリート☆」が公開されたのは2019年2月です。
キノシタが手掛けた、みんなで盛り上がれる速いテンポの曲でした。
名前や個性を覚えてもらう自己紹介と、客席を巻き込む歌が一つになった出発点です。

2020年1月のホロライブ全体ライブでも、この曲でファンとの掛け合いを重ねています。
名前を呼ぶ声や、彼女に返されるコールが会場を温めていく。
初期から歌は、一方的に披露するだけのものではなく、その場の人たちとやり取りする手段でもありました。
後年のソロライブのにぎやかさは、こうした実演の延長にあります。

2019年の楽曲公開告知に掲載されたさくらみこ
2019年の楽曲公開告知に掲載されたさくらみこ。
画像出典:画像掲載元

「サクラカゼ」で確かめた、感謝を自分の言葉として歌うこと

2020年の「サクラカゼ」は、ハムが作詞・作曲・編曲を担当した2曲目のオリジナル曲です。
MVの公開は3月、音源の発売は10月で、秋の復帰ライブでも披露されました。
発表と、その曲を大切な場面で歌い直すことの間には、彼女とファンの経験が重なっています。

本人は、約3カ月の休養を経た復帰ライブを、ファンへの信頼が深まった出来事として挙げています。
活動できない間に人が離れてしまうのではないかと不安だったのに、戻ると待っていてくれた。
そこで歌った「サクラカゼ」の感謝の言葉は、そのときの自分の気持ちに重なったといいます。
歌詞の主人公を演じるだけでなく、目の前の相手へ自分の思いとして届ける意味が強くなった場面です。

初期を振り返った彼女は、元気にキャラクターを付けて歌う方法に加え、ありのままに歌ってもよいと気付いたとも話しています。
楽しげな歌い方を手放したのではなく、毎回同じ張り切り方をしなくても、自分の歌になると分かってきたのです。

「サクラカゼ」— MV(2020年)

2024年、曲ごとの違いを引き受けた初アルバム

2023年には6曲入りのEP『heart♡connect』を発表。
翌2024年9月、12曲を収めた初のフルアルバム『flower rhapsody』を発売しました。
自己紹介を担う一曲から、複数の表情を並べて見せる一枚へと、歌を届ける単位も大きくなります。

このアルバムには、迷いや弱さを経て自分を肯定する歌も置かれました。
「SUNAO」では素直になることへのためらいから、相手の愛を受け止めていく姿が描かれ、「flower rhapsody」には自分を肯定する思いがあります。
明るい曲調や華やかな伴奏の中に、迷いや弱さも置かれている。
曲を楽しげにすることと、その内側の気持ちを伝えることを、同時に考える作品になっています。

水野良樹が手掛けた「SUNAO」の録音は、本人にとって特に緊張する経験でした。
歌のレッスンでは、J-POPのオリジナル曲に取り組むための新たな技術を学んだといいます。
これまで親しんできた歌い方を、そのまま全曲へ当てはめるのでは足りない。
憧れの作り手の反応を受けながら、表現をつかんでいったのです。

「DAI DAI DAI ファンタジスタ」では、本人が大げさと感じたサビ前の粘る歌い方を、じんが肯定しました。
録音でのやり取りが、思い切って歌う後押しになったのです。

「flower rhapsody」で向き合った、感情の大きさ

表題曲「flower rhapsody」は、完成したらすぐ録音した曲ではありません。
録音まで時間を置き、準備を重ねました。
過去の自分への思いを歌う、大切な曲でした。

歌う際に難しかったのは、感情があふれて胸がいっぱいになることでした。
自分自身が揺さぶられる歌を、最後まで届ける。
そこにも挑戦がありました。

「flower rhapsody」— アニメーションMV(2024年)

2024年10月26日の初ソロライブでは、この曲が本編の最後に置かれました。
その前にはファンへの手紙があり、わずかに震える声で歌いました。
そしてアンコールでは、原点の「マイネームイズエリート☆」で再び会場と盛り上がりました。
自然な気持ちを出す歌と、元気いっぱいの歌が、同じライブの中で共存したのです。

2024年の初ソロライブで「SUNAO」を歌うさくらみこ(撮影:高田真希子)
2024年の初ソロライブで「SUNAO」を歌うさくらみこ(撮影:高田真希子)。
画像出典:画像掲載元

共演の経験を、次の自分の歌へ持ち帰る

表現を広げたのは、ソロ曲の制作だけではありません。
星街すいせいとのユニット、miCometでの「シュガーラッシュ」や「Lollipop」について、さくらみこは、自分一人では思い付かなかったおしゃれな曲に挑戦できたと話しています。
一緒に歌うと、いつもよりうまく歌えたように感じるとも語りました。

その経験は、2026年の2ndアルバムで、かっこよさを出す表現や、速い言葉を歌う挑戦につながったといいます。
誰かの声と並ぶことが、ソロで使える選択肢を増やしていく。
共演を一度きりの組み合わせで終わらせず、自分の曲へ持ち帰っているところが、この時期の変化です。

2ndアルバム『Blooming Cinderella』は2026年10月14日に発売されました。
本人は、1stアルバムをそれまでの軌跡を詰め込んだ作品、2ndをこれからの姿を見せようとする作品と説明しています。
共作詞した「your petal」にも、支えてくれた人と今後も歩みたいという思いが込められました。
感謝を振り返るだけでなく、次は自分が手を引こうとする意志へと、歌の向かう先が広がっています。

元気な声のまま、伝えられる気持ちが増えていく

さくらみこは、共演で出会った表現も自分の作品へ取り入れています。
一人では思い付かなかった曲を歌う経験が、次の挑戦を呼ぶ。
共演からも、自分の声の可能性を広げ続けているのです。

自然な気持ちを届ける歌と、客席と楽しむ歌。
両方を同じステージで見せるところに、彼女の表現の広がりがあります。
曲中の声の明るさやフレーズの作り方は、さくらみこの歌い方で詳しく扱います。

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