AKANE LIVの歌い方|高音のビブラート、地声の強さ、囁きで変わる物語

AKANE LIV/2014年ソロ・アルバム『LIV』取材の掲載写真 AKANE LIV
AKANE LIV/2014年ソロ・アルバム『LIV』取材の掲載写真

AKANE LIVの歌では、声が伸びる瞬間だけでなく、そこへ至るまでの変化にも耳を向けたくなります。
高音を大きく揺らす歌い方、地声で押し出す言葉、揺れを抑えた囁き。
その違いは、それぞれの曲に登場する人物や、感情の距離と結び付いています。

ビブラートをかける声と、かけない声

本人が説明するLIV MOONの工夫の一つが、高音をバンドの中で目立たせたい時に、ビブラートを強くかけることです。
一方、「EYES OF MARIONETTE」では、人形の怖さを出すために揺れを抑え、マイクに近づいて囁きました。
同じ歌い手が、曲の人物に合わせて響き方を変えているのです。

ビブラートは、伸ばした音を周期的に揺らす表現です。
声に動きを与える選択もあれば、揺らさずに言葉や音色を残す選択もある。
AKANE LIVの例では、いつも同じように響かせることより、人物に合う声を選ぶことが優先されています。

この曲が演奏された2016年のライブでも、壊れた人形を演じる時の声色と、前後の力強い曲との違いが記録されています。
囁きの効果は、その一曲だけで完結するものではなく、強い声が並ぶライブの中で場面を変える働きも持っています。

他の歌い手に重ねた時、揺れる声が別の役割を持つ

GALNERYUSの「ANGEL OF SALVATION」への客演は、声を重ねる例です。
作曲したSyuは、小野正利の力強い主唱にAKANE LIVの声を合わせた時の効果を期待し、仕上がりには輝きが増したと話しています。
小野も彼女のビブラートを評価し、静かになる場面で弦楽器と同じフレーズを歌う部分を挙げました。
一人の声で曲を引っ張る時と、別の歌い手の上に声を重ねる時では、同じ揺れにも違う役割があります。
主唱と同じ強さを競うだけでなく、響きの違いが合わさって曲の表情を作るのです。

AKANE LIV/2016年『R.E.D』取材の掲載写真
AKANE LIV/2016年『R.E.D』取材の掲載写真。
画像出典:画像掲載元

高い声も低い声も、登場人物のために使う

ソプラノが得意だったAKANE LIVには、宝塚の男役で育てた低音もあります。
本人は、舞台では限られた声質で一つの役を演じる一方、LIV MOONではより多くの声質や音域を使えると話しています。
歌の中で人物が移り変わることが、その使い分けを支えています。

「The End of the Beginning」では、一人で七人を演じています。
役ごとに表情まで変わるという本人の話にも、声の高さと演技を結び付ける姿勢が表れています。

公演でも、悪魔や妖精、小人や巨人を演じ分けた姿が記録されています。
声の持ち主が変わることを聴かせる曲だからこそ、多彩な声色が物語を進める力になるのです。

「NIGHT PARADE」で変わる、中音域と言葉の存在感

「NIGHT PARADE」では、Aメロもサビも地声を使うことが挑戦になりました。
Jeff Miyaharaとの制作を通じて、本人は中音域の安定が感情の届き方を変えると実感しています。
R&B的なリズムの細かなニュアンスをつかむのにも、時間をかけたといいます。

ソロ作で本人が語った、慣れない音域で地声を張る試みも、この時期の歌を考える手掛かりです。
羽毛田丈史との録音では、本人が直したかったざらつきを残す提案もありました。
滑らかに整えない部分も、表現として生かしています。

地声という言葉は、ここでは本人が歌い方の違いを説明した呼び方です。
大切なのは、声区の名前だけで整理することより、その声でどんな距離から感情を伝えようとしたか。
遠くへ響かせる高音の印象と、言葉の手触りを近くに置く表現を、同じ物差しだけで比べない方が歌の意図を捉えやすくなります。

柔らかい声にも、キーを選ぶ理由がある

「Sunrise Over Sea」では、サビをすべて地声にする案もありました。
ただ、そばで支えるような愛情を歌うため、柔らかさを生かせるキーを選んでいます。
声の強さより、曲に必要な優しさを大切にした選択です。

「NIGHT PARADE」で開拓した歌い方があるからといって、次の曲にもそのまま当てはめるわけではない。
同じソロ作品の中にも、地声の勢いを使いたい場面と、柔らかさを残したい場面があります。
高い声も強い声も出せることと、その曲で使うことは、別々に考えられているのです。

「Hourglass」は、つないで歌うAメロと強いサビの対比

「Hourglass」では、強いサビに対し、Aメロをどう歌うかを試しました。
強く歌う案も経て、マイクの近くで柔らかく、レガート気味につなぐ歌い方を選んでいます。
本人が重視したのは、この対比でした。

レガートは、音と音を滑らかにつなぐ表現です。
各音を一つずつ押し出す場合とは、フレーズ全体の流れが変わります。
ここではAメロから一貫して力を増していくのでなく、つながりのある柔らかな部分を置くことで、サビの声に別の表情を持たせています。

低音の豊かさと、曲で使う声の幅は別のもの

2024年の『CIRCLE OF LIFE』では、批評家Andyが、特に低音に厚みと滑らかさを感じたと記しています。
ただし、作品全体には厳しく、声の力に比べて歌の旋律が安全な範囲に収まりすぎていると評しました。
その中で「Nessun Dorma」は、歌声の多様さが表れた例として選んでいます。
これは一人の聴き手の評価ですが、声の豊かさと、それを曲の中でどれだけ使うかを分けて考える視点にはなります。
音域の広さだけでなく、各曲がどんな声を必要としているかにも注目したいところです。

AKANE LIV/2016年12月11日、原宿アストロホール公演(撮影:Kazuya Miyake)
AKANE LIV/2016年12月11日、原宿アストロホール公演(撮影:Kazuya Miyake)。
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曲に合わせる声は、録音の中でも探し直される

「DOUBLE MOON」の録音では、キーや声色を変え、七、八通りを試しました。
オペラ風から悪魔を思わせる声まで、西脇辰弥と曲に合う表現を探したのです。

2作目の『GOLDEN MOON』では、自分本来の声を中心に置き、他の声質はアクセントとして使ったと語っています。
多くの声を試すことと、そのすべてを同じ比重で使うことは違う。
表現を選び取る段階では、曲を支える声を定め、他の声が必要な場面を考えることも大切になっています。

その過程は、後の囁きや中音域の使い方にも通じる、AKANE LIVの歌を考える軸になります。
声の種類をたくさん持つだけでは、どの声を使えばよいかは決まらない。
曲の登場人物、言葉を届ける距離、前後のフレーズとの違いを考えて、使う声を絞っていく。
そこまで含めて聴くと、華やかな高音の周りにも、多くの表現が置かれていることに気づけます。

こうした選択が時期をまたいでどう広がったのかは、AKANE LIVの歌声の変遷でたどっています。

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