「Havana」の歌手としてカミラ・カベロを知った人には、その後の作品が意外に感じられるかもしれません。
どんな声で、何を届けようとしてきたのか。
ソロ活動の出発点から、曲ごとにたどってみましょう。
2012〜2017年|与えられた歌から、自分で選ぶ歌へ
2012年、15歳でオーディション番組に参加したカミラは、フィフス・ハーモニーの一員として活動を始めました。
その後、グループの外で共演曲にも参加し、2016年末に脱退。
自分で曲を書くことへの思いが、ソロの歩みを支えていました。
ただし、一人になればすぐに自分の歌が見つかるわけではありません。
単独名義の最初のシングル「Crying in the Club」は、シーアが制作に関わった曲でした。
マネージャーのロジャー・ゴールドは、出来の良い曲でも、本人らしさを十分に示すものではなかったと振り返っています。
方向を変えたのが「Havana」です。
フランク・デュークスが弾いたシンプルなサルサ風のピアノから、カミラは生まれた街を思い浮かべ、その場でサビを作りました。
幼い頃に親しんだ音楽と、自分の旋律が結びつく。
歌の出発点が、自分の記憶へ近づいたのです。
2018年|強いヒット曲の隣に、静かな声を置く
初アルバム『Camila』には、「Havana」の華やかさだけでは捉えられない歌が並びます。
「Real Friends」や「Consequences」は、軽く空気を含むような声を生かした曲。
大きなサビで押し切る歌ばかりにせず、静かな時間もソロの個性にしました。
本人は、「Consequences」を「Never Be the Same」で描くような恋の、その後にある歌として捉えていました。
強くひかれた相手を忘れられず、別の誰かと比べてしまう。
一つの物語の中でも、違う段階の感情を歌にできると考えていたのです。
対照的な歌が並ぶ背景には、この視点があります。
また、アルバム制作に深く関わった理由については、歌の中にいる人と、普段の自分が同じであることを重視していました。
誰かが用意した人物像を歌うより、自分の考えを曲へ残す。
ソロ初作では、声の目立ち方とともに、誰の気持ちを歌うのかも選び直していました。
2019年|『Romance』で、感情を大きく外へ出す
次作『Romance』では、歌のスケールを意識的に変えています。
カミラは、初作よりもドラマティックで、ライブの大きな空間に合う音を求めていました。
静かな作品を作れたからこそ、今度は感情をもっと大きく外へ出す方向へ進んだのです。
「Shameless」には、暗さを帯びたギターと、張り詰めた強さがあります。
ラテンの軽快さとは違う、ロックに近い緊張感を前へ出した曲でした。
「Cry for Me」では、声のざらつきも曲の切迫感を支えます。
加工された短いギターの音に対して、歌は感情をこぼすような荒さを帯びる。
滑らかさだけを美点にせず、少し引っかかる響きも表情として使う方向が、ここでは鮮明です。
このアルバムには、恋愛のきれいな面だけを並べない意識もありました。
本人は、複雑で整っていない感情も含め、実際に経験したことから曲が生まれたと話しています。
表に出すことへのためらいもあった経験を歌にする。
感情の種類が増えたことは、声が担う役割を考える手がかりになります。
激しい曲の隣には、「Used to This」の親密さもあります。
長く知っていた相手との関係が変わった、その新しさを捉えたかった曲だとカミラは説明しています。
大きなドラマを求めた時期にも、二人の間の小さな出来事へ近づく視点は残りました。

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2021年|『シンデレラ』で、人物の言葉から歌へ進む
映画『シンデレラ』では、物語の中で人物として歌う経験が加わります。
自分を一定の形に整えて見せる音楽のパフォーマンスに比べ、映画では監督を信頼し、もっと無防備になる感覚があったと本人は話しています。
カメラを意識しすぎず、目の前の相手とのやり取りに集中することが、新しい課題でした。
「Million to One」では、その場の演技と歌のつながりも作品に残りました。
音楽プロデューサーのアン・プレヴェンは、撮影現場で歌ったカミラの声を多く使用したと説明しています。
会話から歌へ移る瞬間を自然につなぐため、現場の声と事前に録った歌を組み合わせたのです。
整えた録音を映像へ載せるだけではない、映画ならではの歌の作り方でした。
「Million to One」(映画の公式ミュージックビデオ)
2022年|『Familia』で、歌が生まれる関係を変える
『Familia』では、制作の場のあり方から変わります。
以前のカミラには、優れた曲を書けることを周囲へ証明したい気持ちがありました。
今回は、自分が面白いと感じる旋律や言葉を素直に選ぶことを重視。
スコット・ハリスと日記の内容を話してから曲を書くなど、安心して考えを出せる関係が制作の土台になりました。
文化的な背景を共有する仲間と作ることも、大切な選択でした。
幼い頃から知っている音楽を一から説明せず、一緒に思い浮かべられる人たちがいる。
少人数で食事をともにするような親密な環境で、歌を考えていったのです。
「Havana」で自分の記憶へ近づいた歩みが、今度は一緒に作る人との関係まで広がりました。
作品には、英語の歌とスペイン語の歌が並びます。
「Celia」ではスペイン語で軽やかな恋心を描き、「Bam Bam」ではエド・シーラン、「psychofreak」ではWILLOWと共演。
同じ明るさだけでまとめず、文化の親しさと、心の不安を話せる親しさを、一枚の中に置きました。
2024年|『C,XOXO』で、加工した声も自分の表現にする
『C,XOXO』では、声を囲む音が大きく変わりました。
エル・グインチョとジャスパー・ハリスとの制作で求めたのは、少ない層のシンセサイザーやサンプル、強いドラムによる空間です。
本人が『Familia』を日差しに重ねる一方、この作品には夜の感触を求めたように、声の置かれる景色も変わっています。
この変化は、ラテンのルーツを捨てたという話ではありません。
『Familia』が両親から受け取った文化へ近づく作品なら、『C,XOXO』は、マイアミで育つ中で親しんだヒップホップなどにも目を向けた作品でした。
自分の中にある別の音楽を、歌の表へ出したのです。
制作は、カミラと二人の作り手が、小さなバンドのように進めました。
予想しやすい音だけを選ばず、面白いと感じた方向を試す。
完成されたイメージに曲を合わせるより、音を作りながら次の姿を探す方法が、この作品の冒険を支えています。
「Chanel No.5」では、より自分を操れる人物の視点を歌にしています。
カミラ自身が説明するのは、気まぐれな遊び心と強さが同居する存在。
体験を率直に歌うだけでなく、少し誇張した人物になって声を動かす表現へと、選択が広がりました。

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2025年|違う時期の声を、一つのステージへ
2025年の「Yours, C」ツアーでは、これまでのアルバムをまとめて届ける方向へ進みます。
前年に『C,XOXO』を中心に見せた公演とは異なり、各時期の曲を祝う内容にしたいと本人は話していました。
新しい作風だけで以前の歌を塗り替えず、それぞれを現在のステージへ持ち込む考え方です。
同年7月のダブリン公演では、「Never Be the Same」の抑えた歌い出しから、力を込めたサビへ広がる歌がありました。
「Quiet」では観客へ静かに聴くよう促し、伴奏を外した声を響かせる場面もあります。
声を加工する作品を作った後にも、歌そのものへ耳を集める時間は残っています。
昔の曲を大きく響かせる時間も、伴奏を外して声へ耳を集める時間もある。
今のステージでは、これまでに選んできた歌い方が隣り合っています。
曲ごとの発声と声の使い分けは、カミラ・カベロの歌い方で掘り下げています。

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録音を…



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