堂本光一(DOMOTO/KinKi Kids)の歌い方|主旋律の外にも、光一の歌がある

チェックのジャケットを着た堂本光一 シンガー
2025年の堂本光一。撮影:Shintaro Oki(fort)/出典:Billboard JAPAN

堂本光一のソロ曲を聴いていても、聴こえている光一は一人とは限りません。
主旋律を歌う声のほかに、本人が何度も録音したコーラスが重なっているからです。

2015年の「INTERACTIONAL」では、歌の録音がなかなか終わらないほど声を重ねました。
一方、2025年に堂本剛と録り直した「愛のかたまり」では、サビの主旋律を剛に任せ、自分は高いほうのハーモニーを担当しています。

一人で何役も歌うこともあれば、二人の役割をはっきり分けることもある。
光一の歌い方は、目立つメロディーをどう歌うかだけでなく、自分の声を曲全体の中でどう使うかに注目すると面白くなります。
まずは、2021年のソロツアー『PLAYFUL』で歌った「INTERACTIONAL」から。

一人の歌手が、コーラスまで何度も歌う

「INTERACTIONAL」の録音について、光一は、それまで最も多かった「Danger Zone」のトラック数を超えたと思う、と振り返っています。
ここでいうトラックは、録音した声を一つずつ分けて保存する枠のことです。
主旋律を一度歌って終わりではなく、コーラスの声も録り足しながら、一曲の響きを作っていたわけです。

ステージでは一人の歌手でも、音源の中では一人何役にもなれます。
レコーディングなら、同じ歌手が違う高さや違うフレーズを別々に歌い、同時に鳴らせます。
主旋律を歌っている間にも、もう一人の自分が別の音を歌えるのです。

「INTERACTIONAL」には、竹内浩明がコーラスアレンジで参加しています。
声をどう組み合わせるかという設計があり、それを光一自身の歌で録音する。
歌手は曲のいちばん手前にいる人であると同時に、その後ろで響く声の担い手にもなります。

このことを知ってから聴くと、歌詞を追いやすい主旋律以外にも耳を向けたくなります。
どこで別の声が加わるのか。長く続く声の横で、短いフレーズがどう入ってくるのか。
メロディーを口ずさんでいたときには聞き流していた声が、一曲の印象を支えているかもしれません。

もちろん、音源に重なった歌を、ライブで一人が同時に全部歌うことはできません。
録音で作った響きと、その場で歌う声を組み合わせるのも、ソロのステージの面白さです。
主役の歌だけを抜き出すより、周りの声も含めて聴くほうが、「INTERACTIONAL」に注いだ手間を想像しやすくなるでしょう。

「愛のかたまり」では、主旋律を剛に任せた

堂本光一と堂本剛のDOMOTO、光一は左奥
2025年のDOMOTO。左奥が堂本光一、右手前が堂本剛。撮影:Shintaro Oki(fort)/出典:Billboard JAPAN

二人で歌うときにも、光一は声の組み合わせを考えています。
光一が作曲、剛が作詩を手掛けた「愛のかたまり」は、2001年にKinKi Kidsの楽曲として発表されました。
2025年にはDOMOTOとして、新たなアレンジとボーカルで録音しています。

光一が説明したサビの違いは、歌の担当を知ると分かりやすいものです。

2001年の録音では、二人で同じ主旋律を歌い、その上に光一のコーラスを重ねていました。2025年の再録では、剛が主旋律、光一がその3度上のハーモニーを受け持っています。

「3度上」は、たとえば主旋律のドに対してミを重ねるような、音の高さの関係です。
二人が同じメロディーを歌う声に、もう一本を足すのか。
それとも、最初から二人が違う音を歌うのか。
同じ曲でも、声の組み立て方が変わっています。

光一は、担当を分けたことで、二人の響きやハーモニーの旋律がより伝わると考えていました。
主旋律を担当することだけが、歌の存在感を示す方法ではありません。
別の高さから相手の歌と重なることで、自分の声が何をしているのかを聴き手に伝えることもできます。

2025年版の「愛のかたまり」では、よく知っているサビのメロディーを追ったあと、高いほうの声にも注目してみたくなります。
光一の歌を探す場所は、主旋律の中だけではないのです。

歌を重ねる曲も、せりふのように歌う曲もある

自分の声を何本重ねるかと、その一本をどう歌うか。光一は、どちらにも工夫をしています。
2015年のアルバム『Spiral』に収められた「STELLAR NIGHT〜星のバルコニー」では、光一は舞台を意識した歌い方を選びました。
深く息を取り、せりふのように歌うことを試したといいます。

コーラスを増やす話から、今度は一つのせりふをどう言うかという話になる。
歌の本数を増やすだけでは、せりふらしさは出せません。
一つの言葉にどんな気持ちを込めるか、どこで息を取って次の言葉へ進むかという、一回の歌い方が大切になります。
何人分もの声を録る仕事と、曲の中の人物として言葉を歌う仕事。その両方を、一人の歌手が引き受けています。

歌詞をどう届けるかという意識は、KinKi Kidsでの歌にもありました。
2006年の「夏模様」について、光一はAメロの歌詞が気に入っていて、言葉が届くように歌っていると話しています。
ただし、その歌詞をどう受け取るかは聴き手に委ねていました。

歌手が意味を考えて歌うことと、聴き手の解釈を一つに決めることは別です。
歌い手の気持ちが込められていても、聴く人は自分の記憶や風景を重ねられる。
「夏模様」で自分の夏の思い出を浮かべる人と、せりふのような歌から物語を想像する人がいてもいい。
光一が曲ごとに言葉の伝え方を考えることで、聴く側にも、歌の中へ入っていく手がかりが生まれます。

ステージの全体を見る人が、歌の一部分も担う

白い衣装でダンサーとステージに立つ堂本光一
2025年『RAISE』横浜公演の堂本光一。撮影:後藤巧/出典:日刊SPA!

光一が歌や踊りに加えて、舞台全体に関心を持つことを示す話があります。
2019年に一緒にニューヨークへ行った井上芳雄は、観劇後の光一との会話を振り返りました。
光一が気にしていたのは、役者の演技だけでなく、装置をどこへ収納するのか、セットをつるすパイプが何本あるのか、といったことだったそうです。

自分が立つ場所だけでなく、舞台がどう作られているかまで見ている。
この話からは、客席から見える華やかさを、その裏側の仕組みと一緒に楽しむ人なのだと感じます。
歌でも、目立つ主旋律と、その周りの声を一緒に考えてみると、光一の仕事の細かさが見えてきます。
「INTERACTIONAL」を気持ちよく聴き流していても、その音源には何度も歌って録音したコーラスが含まれているのです。

2025年のソロツアー『RAISE』では、生バンドとコーラス、ダンサーが加わるステージを作りました。
真ん中に立つ光一に目を奪われながら、周りの演奏やコーラスにも耳を向ける。
そのとき光一が歌っている一つの旋律と、ステージ全体の音との関係も楽しめます。

堂本光一の歌い方を知るなら、まず「自分の声を、どんな役割で使っているのか」と考えてみたい。
ソロでは何度も録音して声を重ね、「愛のかたまり」の再録では主旋律とハーモニーの担当を分ける。
一曲の中で光一が歌っている場所を知ると、いつもの曲でも耳を向ける先が変わります。

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