MindaRynの歌声は、アニメの物語を前へ動かす力を持っています。
「Like Flames」の力強いサビを入口に、彼女を知った人も多いでしょう。
ただ、その歩みを追うと、強く歌う場面が増えただけではありません。
言葉の響きを整え、同じサビに違う気持ちを込め、低いトーンや激しいラップにも踏み出してきました。
カバーから始まった声が、どんな表現を手にしてきたのかをたどります。
カバー時代から、自分の声で伝える意識があった
タイ出身のMindaRynは、2015年頃からYouTubeにアニソンのカバーを投稿していました。
本人が振り返る出発点は、人前で歌うことへの怖さです。
一人でカメラに向かう形なら歌えた。
そこに届いた反応が、観客の前に立つ自信につながっていきました。
録音や編集を自分で行った経験は、デビュー後の自宅でのデモ制作にも生きています。
好きな歌手の曲を歌っていても、声まで似せることを目指していたわけではありません。
デビュー時、MindaRynはTRUEやLiSAの伝える力に共感しながら、自分の型で歌いたいと説明しています。
また、ロック好きであると同時に、バラードやゆっくりした曲を得意なスタイルとして挙げていました。
後年の柔らかな歌にも、早くから土台があったのです。
2020年、録音を人と作り、日本語の響きを磨く
2020年11月、「BLUE ROSE knows」でデビューします。
日本では初めて本格的なボイストレーニングを受け、息の使い方や発音を学びました。
特に本人が苦労を挙げたのは、日本語の「つ」「す」「ず」の区別です。
歌うことが好きで積み重ねた経験に、言葉と息を意識して扱う練習が加わった時期でした。
一人で録っていた歌に、エンジニアやディレクターの耳が加わったことも、大きな経験でした。
「Sincerely(English Version)」では、英語とロックのリズムに合わせ、声のアタックを変えています。
言語とアレンジに合う歌を作る姿勢が、最初の一枚から表れていました。

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2020〜2021年、明るさだけではない役柄を歌い始める
デビュー後の配信曲では、アニメから離れた物語にも取り組みます。
「kiss my cheek」では大人の恋の切なさを、「Be the one」では素直になれない恋心を、「love my friends」では人と近づきたい明るさを表しました。
曲調と主人公が変わるたび、自分の歌い方も試す。
本人にとっても、表現の幅を探る挑戦でした。
そして2021年の「Like Flames」では、『転生したらスライムだった件』の激しい展開に応える歌へ。
MindaRynは、サビをチェストボイスで力強く歌ったと説明しています。
炎を吐くドラゴンを思い描き、聴き手を奮い立たせようとしたのです。
明るく親しみやすい歌声に、物語を引っ張る強い呼びかけが加わりました。
ここで大切なのは、デビュー曲から順番に声が強くなった、という一方向の成長にしないことです。
恋の歌では距離を近づけ、友達への歌では笑顔を見せ、戦いの物語では立ち上がる力を渡す。
声をどう使うかの選択肢が、曲とともに増えています。
2022年、力強さの中に切なさと時間の流れを入れる
2022年の「Daylight」は、同じロックでも「Like Flames」よりゆっくりした曲です。
孤独な主人公を包む周囲の温かさを、自分が人に支えられてきた経験と重ねました。
速さで押す曲とは違う時間の中で、励ます気持ちを届けようとしています。
同年の「Make Me Feel Better」では、繰り返すサビの意味まで変えました。
最初は仲間と前へ進む気持ち、落ちサビではここまで来られた充実感を込めています。
同じ言葉を再び歌う時にも、物語の中では時間が進んでいる。
その経過を歌で伝えようとする作りです。
年末のアルバム『My Journey』では、自ら作詞・作曲に関わった「Another world」も発表しました。
英語で考えた思いをSACHIKOと日本語にしていく過程を経て、自分の決断を歌へ。
与えられた物語に共感することから、自分の経験を曲の出発点にすることへも歩みを進めています。
録音した歌から、人の前で届ける歌へ
ただし、動画で歌う経験が、そのまま舞台の自信になったわけではありません。
2023年の本人は、デビュー前のイベントで思うように歌えず、自分はカメラの前でしか歌ってこなかったと気づいた経験も振り返っています。
曲を録音して届ける力と、人の前で歌う力。
その違いに向き合い、ギターやパフォーマンスにも経験が必要だと考えていました。
2023年の初ワンマンを経て、2024年には弾き語りのソロライブへ進みます。
緊張を和らげるため、ステージに私物を置き、自分の部屋のような空間を作りました。
近い距離で観客の目を見て、気持ちを受け取りながら歌う。
歌を届ける環境も、自分で整えていくようになったのです。
2024年、低いトーンと、はみ出す声の両方へ
2024年の「THIRD PARTY」は、Aメロでシャウトとラップを混ぜる新しい挑戦になりました。
本人が求めたのは、従来のクールなロックとは違う、少しやんちゃな人物像です。
メロディーを力強く歌うだけでなく、言葉を勢いよく投げかける表現にも踏み込みます。
一方、『Across Miles』の「searchlight」では、低めのトーンで歌い始め、次第に明るいニュアンスを足していきました。
夢を追う途中の迷いも伝えたい、という思いから生まれた曲です。
最初から元気づける声で包むのではなく、暗い気持ちと一緒に歩き、最後に感謝へ向かう。
歌の明るさそのものが、物語の変化を表すようになっています。
この頃の本人は、主題歌を歌える喜びに加え、作品の一部を担う責任も感じるようになったと話しています。
アニメの歌詞に自分と重なる部分を探す一方、自分自身の迷いも隠さず歌にする。
作品に寄り添うことと、自分の気持ちを出すことが、互いを深める関係になっていきました。

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2025年、共演者と作るラップとシャウト
2025年の「Missing Link」ではASHと共演し、さらにハードなラップに取り組みます。
MindaRynは、それまで使ったことのない声のポジションだったと振り返りました。
シャウトはASHがディレクションし、もっと攻撃的に表現するよう助言しています。
自分だけで声を決めるのではなく、相手の反応を受けながら未知の表現を探した録音でした。
「THIRD PARTY」でラップを交えた歌に挑み、その後の共演で、さらに激しい表現を経験する。
ここには段階があります。
新しい曲を歌うたびに声そのものが別人になるのではなく、使ってこなかった表情を、制作の中で引き出しているのです。
2026年、カバーと自分の歌を観客と共有する
2026年春のヨーロッパツアーでは、カバーも引き続き大切な役割を担いました。
ケルンでは「βiοç」をアコースティックギターで弾き語りし、最後には観客と「Like Flames」を歌っています。
自分一人でカメラへ歌っていた人が、好きな歌も、自分の代表曲も、その場にいる人と共有するようになりました。
MindaRynの変遷は、高音の迫力だけでは捉えきれません。
発音を磨くこと、サビごとの気持ちを分けること、迷いを低いトーンで始めること、共演者と新しい声を試すこと。
その積み重ねによって、強く背中を押す歌にも、そばにいるような歌にも説得力が生まれています。
好きなアニソンを自分の声で伝えたい。
その出発点を保ちながら、伝え方を増やしてきた歩みです。
曲ごとの声の選び方は、MindaRynの歌い方で掘り下げています。

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