サブリナ・カーペンターの歌声はどう変わった?「まっすぐ歌って」と言われた声が、歌で芝居をするまで

2025年3月、O2アリーナで歌うサブリナ・カーペンター サブリナ・カーペンター
写真:Raph_PH / CC BY 2.0

十代のサブリナ・カーペンターが録音で音を伸ばし、自然にビブラートをかけると、「まっすぐ歌って」と求める制作者がいました。本人には、それが自分の声らしい歌い方だった。それでも当時は、ポップスに合うように歌うことと、自分の声を残すことの間で迷いがありました。

ところが2025年、彼女は新作の録音について、音を正しく当てることに加え、どの歌い方ならもっと芝居として面白いかを考えたと話しています。声を抑えるよう言われた人が、いくつもの声で物語を演じるようになるまでに、何が変わったのでしょうか。

2015年――歌の主人公に自分を重ねる

デビュー作『Eyes Wide Open』を出したころ、サブリナはまだ15歳でした。テレビドラマへの出演で知られていましたが、音楽は子どものころから続けてきた仕事です。地元で歌を習い、動画では好きな歌手たちの曲を歌っていました。

アルバムの表題曲「Eyes Wide Open」は自作ではありません。それでも、進む道を探す歌に自分の姿が重なると本人は話しました。一方、「Too Young」では、若すぎると見なされるもどかしさを仲間と曲にしています。借りた物語を自分のものとして歌うことと、体験を自分の言葉で書くこと。二つは初期から同居していました。

彼女が望んだのは、聴いた人が一人ではないと感じられる歌です。そのために声で物語を伝える楽しさを、早くから知っていました。後の率直な歌詞や芝居がかった歌唱を、「突然、自分を出し始めた」と考えると、この出発点を見落とします。

2018年『Singular: Act I』――声の癖を、直すものから選ぶものへ

十代のスタジオでビブラートを抑えるよう求められた経験を、サブリナは2018年の取材で振り返っています。伸ばす音を揺らすのは自分の声の一部なのに、均一なポップの声へ整えるように言われる。そこで後から、そうした細部こそ自分をほかの歌手と分けるのだと気づいたそうです。

同年の『Singular: Act I』では、収録された8曲すべての制作に加わりました。本人は、音の重なりや細かな合いの手まで自分らしくしたかったと語っています。レーベルの紹介によると、前作『EVOLution』よりも一曲ごとに芝居をして、物語を伝えることも意識しました。つまり「演じる歌」は、2024年の大ヒットで急に生まれたものではありません。

「Almost Love」や「Sue Me」の強気な言葉は、その時期の一面です。ただ、大きな声で自信を見せることだけが、彼女の答えにはなりませんでした。

2019年「Exhale」――強い姿の裏側も歌う

『Singular』を二つの作品に分けた理由を、本人は「自信には違う形がある」と説明しています。『Act I』には前へ出る強さがあり、『Act II』では、静かに周囲を見て自分の感情を認める強さを見せたかった。2019年の「Exhale」は、その変化がはっきりした曲です。

彼女は発売前、ツアーの終わりにファンのためだけにこの曲を歌っていました。家族や周囲からあれこれ言われ、少し息をつきたい。取材では、ステージで歌うと感情を保てなくなることもあると話しています。「Sue Me」の勝ち気なサブリナが消えたのではありません。同じ歌手が、強がらない声を客席へ届けるようになったのです。

レーベルは「Exhale」を当時もっとも内面を明かした曲として紹介しましたが、それを「初めて本音を歌った曲」とは呼べません。以前から自分の経験を曲にしていたからです。違いは、本音を勝ち気な役だけでなく、不安を抱えた人の姿でも表せるようになったことにあります。

2022年『emails i can’t send』――送れなかった言葉が歌になる

次の大きな転機は、2022年の『emails i can’t send』でした。表題曲の出発点は、本人が自分宛てに書いたメールです。アルバムのほかの曲も、メールやメッセージなど、その時期に思いを整理するために残した言葉から生まれました。

以前より弱さを見せたのは、急に正直になったからではない、とサブリナは説明しています。若いころにはまだ経験していなかった感情を知り、それを書くようになったのです。失恋や不安を歌っても、悲しさだけで終わらせない。本人によれば、つらさを冗談に変えるのも自分の癖でした。

2019年の「Exhale」が人前で息をつく歌なら、このアルバムは、まだ相手へ送らない言葉をいったん自分の前へ置く歌です。そこで見つけた日常の口調とユーモアが、やがて大きな舞台でも使える表現になります。

『emails i can’t send』の「Nonsense」は、その別の表情でした。ツアーでサブリナは、公演する街に合わせて曲の終わりの言葉を変えていきます。彼女はこの経験で、言葉遊びや含みのある言い回しをさらに学んだと話しています。書きためた私的な言葉が歌になり、その歌が今度は客席とやり取りする場所になったのです。

2022年10月、ウィルターンで歌うサブリナ・カーペンター
2022年10月、ウィルターンで歌うサブリナ・カーペンター。写真:Justin Higuchi / CC BY 2.0

2024年『Short n’ Sweet』――よく磨いたポップに、自分の揺れを残す

2024年の『Short n’ Sweet』は、前作の冗談を繰り返しただけのアルバムではありません。本人は『emails i can’t send』への反応も受け止め、ポップ曲の音をもっとつややかに磨きたいと考えたと話しています。その一方で、曲の主人公を一つの性格に固定しませんでした。

「Espresso」では余裕たっぷりに振る舞い、「Please Please Please」では相手に恥をかかせないでほしいと頼む。強気と不安は、2019年に『Singular』の二つの面として並べた感情でもあります。2024年には、その両方を同じアルバムの華やかな舞台へ運び、笑いも本音も隠さず見せられるようになりました。

声そのものについても、本人は後に重要な話をしています。以前にビブラートを抑えるよう言われた経験がありましたが、ジャック・アントノフとの制作では、その響きを彼女の特徴として受け止められたそうです。『Short n’ Sweet』で自分の声の揺れを使えたことを、本人は安堵として振り返りました。十代に「整えるべき癖」と見なされたものが、歌の表情を作る選択肢として残ったのです。

「Please Please Please」の一曲の中で、甘い旋律と相手へ直接言うような声をどう切り替えるかは、サブリナ・カーペンターの歌い方で詳しく扱っています。ここでの焦点は、その選択を本人がいつ、どんな制作の中で使えるようになったかです。

2025年『Man’s Best Friend』――音を当てるだけでなく、声で場面を作る

翌2025年、サブリナは『Man’s Best Friend』を、前作の成功をもう一度なぞるためには作りませんでした。『Short n’ Sweet』では体験を少し置いてから言葉にできたのに対し、今回は出来事のただ中で書いた、と本人は比べています。失敗を笑う曲の中にも、まだ整理しきれていない気持ちがあるのです。

歌唱についての説明は、さらに具体的です。「We Almost Broke Up Again Last Night」の録音では、自分の声をどこまで押し広げられるかを試したと話しました。「Sugar Talking」については、物語をどう演じるかで一行の歌い方が変わると気づいたそうです。音程や旋律だけでなく、その場面で一番芝居として効く声を探す。2018年に望んだ「曲ごとに演じること」が、制作の中心へいっそう進みました。

彼女は主旋律を録った後、コーラスやハーモニーを自分で重ねて、何人もの自分がいるような歌の世界を作るとも説明しています。CBSの取材では、制作者たちとバンドのように歌い、声を録っていったとも話しました。歌い手として決められた音を再現するだけではなく、声の配置や役の違いも考えて曲を作っています。

振り返ると、サブリナの変化は「昔は本音を隠し、今はさらけ出す」という一直線の話ではありません。初期から自分の経験を曲にし、2018年には声の癖を自分のものとして守り、2019年には弱さも歌い、2022年には話し言葉と冗談を作品へ持ち込みました。今は、その全部を材料にして、一行ごとに誰がどんな顔で歌うかまで選んでいます。十代にまっすぐにするよう求められた声は、さまざまな役を行き来できる声になったのです。

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