センラの歌い方|甘い声に、裏声の軽さと荒い声の熱を重ねる

2024年11月、『MARCEL』東京公演でのセンラ/撮影:小松陽祐(ODD JOB) シンガー
2024年11月、『MARCEL』東京公演でのセンラ/撮影:小松陽祐(ODD JOB)

センラの歌を甘い声と呼ぶとき、その甘さをどこに感じるでしょうか。
柔らかな歌い出しなのか、高音でふっと軽くなる響きなのか、それとも切ない言葉の伝え方なのか。
曲を変えて聴くと、ひとつの声色だけで歌っているわけではないことが分かります。
低音と高音、滑らかな声と荒い声、歌とラップの使い分けから、その表現を見ていきます。

『MARCEL』収録のオリジナル音源。

裏声は、高い音を出すだけのものではない

2019年のソロ公演では、「マスカレイダア」のファルセットが印象的な場面を作りました。
一方、「エノウ」では巻き舌やがなりを交えています。
ファルセットは、軽く抜ける裏声の響き。
がなりは、ざらつきを加えた強い声の表情です。
この二つを行き来できるため、滑らかに歌う場面と、勢いを前へ出す場面の差が大きくなります。
同じ日の「ミレエジ」では、優しい声も聴かせました。
荒さを足すときだけが表現の見せ場なのではなく、柔らかく戻ることで、次の人物の輪郭が変わります。

「さよならウィステリア」では、高い音域とファルセットが、切ない歌を引き立てます。
2024年の東京公演でも、そうした響きを聴かせました。
高音を強く張ることと、高音で声を軽くすることは、表現として異なります。
同じ公演の「Flashback」や「J'adore」では、恋心の複雑さを繊細に描く歌声も聴かせています。
センラの裏声に注目するときは、高さだけでなく、声が変わった瞬間に言葉の印象もどう変わるかを追うと、曲に入りやすくなります。

2023年の「Call!!」では、裏声に加え、ビブラートも使っています。
ビブラートは、伸ばした音に揺れを持たせる表現です。
裏声で響きを軽くすることと、音を揺らして余韻を作ることを分けて聴くと、ひと続きに感じていた甘い声にも、違う働きがあると気づけます。

ハスキーな低音と、切なさを帯びた高音

自作曲「vain」を歌った2022年の東京公演では、ハスキーな低音から切なげな高音へと声を運んでいました。
同じ公演の「透明」は、儚く優しい響きで始まります。
低い音を単に太く、高い音を単に大きくするのではなく、音域ごとに違う質感を持たせる歌い方です。
曲の人物が抱える切実さは、その声の変化によっても伝わってきます。

2022年公開のミュージックビデオ。

2022年11月、『VERITE』東京・昼公演でのセンラ/撮影:小松陽祐(ODD JOB)
2022年11月、『VERITE』東京・昼公演でのセンラ/撮影:小松陽祐(ODD JOB)。
画像出典:画像掲載元

声の特徴を聴くときは、低音のかすれ、高音の軽さ、伸ばした音の揺れを、一度に同じものとして捉えないことが大切です。
いずれも甘さや切なさにつながりますが、耳で捉える特徴は違います。
まず一つのフレーズの中で、どの響きが残るかに注目する。
そこから曲を変えると、同じ人の声にある違いをつかみやすくなります。

2018年の「曖昧劣情Lover」では、繊細なアコースティックギターと歌声が響き合いました。
「キャットアイメイク」では、跳ねるリズムに乗る声が色気を作っています。
息の多さだけで甘さを説明するより、何と一緒に響いているかまで聴くほうが、この歌の表情を捉えやすくなります。

旋律を伸ばす声と、言葉を刻む声

センラには、歌う役割そのものを変える面白さもあります。
2019年の横浜アリーナで披露した「ユルファ」では、センラとluzがラップを担い、nqrseが旋律を歌う場面がありました。
一方、めいちゃんとの「シャリューゲ」では、R&B調の曲の中で二人の歌声を聴かせています。
誰がラップをして、誰がメロディを担うのかを固定しない組み合わせです。
センラの声を追うと、長く伸ばす歌と、言葉をリズムに刻む歌の両方に居場所があることが分かります。

2019年公開のミュージックビデオ。

2025年の「翻弄の一途」でも、ラップのような歌い回しと、繊細なファルセットを組み合わせました。
言葉を運ぶ速さと、声の響きの軽さは、別々に変えられる要素です。
どちらか一方を続けるより、その切り替わりに注目すると、曲の動きが見えます。
甘い響きのまま停滞せず、歌の中に速度の違いを作れるところも特徴です。

『歌ってみた祭り!』の「エンヴィキャットウォーク」では、複雑なリズムを軽やかに歌い、「夕立のりぼん」では伸びやかな裏声を聴かせました。
曲によって求められるものは、細かな言葉の運びにも、長い旋律にも変わります。
センラを聴く入口を高音だけに絞らず、こうした異なる曲を並べると、声を運ぶ方法の幅を感じられます。

録音で磨く歌と、二人で重なる声

「Sugary」では、本人が当時最も時間をかけたと語るほど、歌の表現を詰めました。
作編曲を依頼したのは、好きで聴いていたDa-iCEの曲も手がけるTAKAROTです。
普段から惹かれていた音楽を、自分が歌う作品につなげています。
さらりと聴こえるスタイリッシュな歌にも、録音で選び直していく過程がありました。

志麻と歌う「SWEET」では、フェイク、ビブラート、裏声、ラップを組み合わせています。
フェイクは、旋律に細かな音の動きを加える歌い回しです。
同じ公演の「ジャガーノート」では二人の裏声が、「ジグソーパズル」では伸ばした声が重なりました。
二人で歌うときは、自分だけの響きを作るほかに、相手と重なった声を聴く楽しさも生まれます。

2023年公開のミュージックビデオ。

2023年2月、志麻(左)とセンラ(右)のタッグライブ/撮影:小松陽祐(ODD JOB)
2023年2月、志麻(左)とセンラ(右)のタッグライブ/撮影:小松陽祐(ODD JOB)。
画像出典:画像掲載元

2021年の配信ライブで志麻と歌った「極楽浄土」も、しなやかな声とそろった動きが一体になった場面でした。
ここでは、声だけを独立した見せ場として扱っているわけではありません。
二人が同じ時間を進みながら歌うことで、曲の流れを作っています。
録音版で声の重なりに耳を向け、ライブ版では動きも含めて受け取ると、同じ曲にも別の入口ができます。

甘さの中に、どんな人物がいるのか

2021年のソロ公演で歌った「Holiday」は、休日を夢見る人の歌を柔らかく届ける曲でした。
同じ公演の「孤独の宗教」では暗い感情を前に出し、「J'adore」の最後では独唱で切なさを残しています。
甘さは、明るい気分だけを表すためのものではありません。

2021年公開のミュージックビデオ。

「Starry Heaven」について、センラ自身も、盛り上がる曲や色気のある曲とは違う、新しいバラードへの挑戦と語っています。
声の強さで曲を引っ張る場面と、静かな曲の中に声を置く場面。
その両方を聴くと、センラの柔らかな声が、曲に応じてどんな役割を担うのかを考えられます。

恋の歌を聴くときにも、声がきれいかどうかに加えて、その人物が相手へ近づこうとしているのか、届かない思いを抱えているのかを追ってみてください。
声の軽さや強さを、言葉が置かれた場面と一緒に受け取ると、同じ甘い声が違う感情へつながります。
センラの歌の面白さは、その違いを作れることにあります。
こうした表現を広げてきた道のりは、センラの歌唱変遷でたどっています。

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