Stray Kidsの激しい曲の中で、ふっとメロディーに耳が向く。
バンチャンの歌を考える入り口には、そんな声の切り替わりがあります。
「God’s Menu」で彼が担う甘い歌は、強烈なラップと同じ曲の中に置かれています。
声を強く出すことだけでなく、周囲と違う質感を選ぶことも、曲を動かす力になるのでしょう。
ここでは、歌の柔らかさ、力の配分、そして歌う相手との関係から、バンチャンの声を見ていきます。
柔らかな声が、ラップの鋭さを引き立てる
「Scars」は、バンチャンの柔らかな導入から、チャンビンの力強いラップへと移ります。
最初から全員が同じ強さで押していく構成ではありません。
まずメロディーの線に耳を向けさせ、次に言葉の鋭さを際立たせる。
バンチャンの声は、この対照の片側を担っています。
ここで注目したいのは、声量の大小だけではなく、次の歌い手が入ったときに印象がどう変わるかです。
一人の声だけを切り取って評価するより、受け渡しまで聴くと、その柔らかさが曲の中で果たす役割を捉えやすくなります。
押し出す力を落としても、感情は薄くならない
「Lose My Breath」の録音について、スンミンは、慣れていた強いトーンから力を落とし、自然な声へ寄せたと説明しています。
バンチャンも、さまざまな歌唱法を試し、特にスンミンやチャンビンに違いを感じたと話しています。
自分一人の技術を誇る話ではなく、八人の声を曲に合う形へ調整する試みでした。
この曲で目指したのは、柔らかさの中に切迫した感情を残す表現です。
抑えて歌うことは、感情まで薄くすることではありません。

撮影:Kosmas Pavlos。
画像出典:画像掲載元
息の気配がある歌を、単に息をたくさん吐く歌と考えると、表現の狙いを見失います。
ここで聴きたいのは、強く言い切らずに気持ちを伝える声です。
同じ音量で歌い通すかどうかより、どれくらい近い距離の言葉として届くかに耳を向けると、この曲の選択が見えてきます。
暗い曲の緊張感を、声と伴奏で分け合う
ヒョンジンがバンチャンと取り組みたいと提案した「Red Lights」は、二人で官能的な表現を見せる曲でした。
声を聴くときも、明るく開放的に歌い上げる曲とは異なる目的を、まず押さえておきたいところです。
2022年のソウル公演では、この曲を八人で披露し、吐息から始まる演出と抑圧された世界観を組み合わせています。
ただし、これは二人で歌った録音とは別の公演版です。
同じ曲名でも、歌う人数や演出を確かめると、声の印象を混同せずに楽しめます。
二人の声を聴くときは、どちらがより強く出ているかを競べるだけでなく、近づき方や緊張感がどうつながるかを聴いてみてください。
色気を声の低さだけで説明せず、曲の場面を二人でどう保っているかに目を向けると、歌の役割が広がります。
「Red Lights」―バンチャン&ヒョンジン(2021年)
「Railway」には、重いビート、暗いシンセサイザー、途中から加わるエレクトリックギターが、緊張感を作る仕組みがあります。
その上にバンチャンの官能的なボーカルが乗り、曲の大人びた雰囲気を強めています。
サビでは、メロディーを滑らかに届ける歌が中心になります。
伴奏が強くても、声まで同じ硬さにそろえる必要はありません。
音の緊張と歌の流れが、異なる役割を持っていると捉えると聴きやすい曲です。

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曲全体から受ける迫力を、そのまま歌手の声量だと考えないことも大切です。
一度はビートやギターに、次には歌の線に注意を向けてみる。
聴く対象を変えると、伴奏と声がそれぞれ何を受け持っているかを追いやすくなります。
メロディーを歌い継ぐときの、声の役割
バンチャン、リノ、スンミン、アイエンによる「Waiting For Us」は、アコースティックギターから始まるロックバラードです。
ラップの鋭さと対比する曲とは違い、四人のメロディーが曲の温かさを担います。
柔らかい歌と、伸びやかに歌うことは、対立するものではありません。
短い一節をほかの声へ渡す場面と、旋律を長く聴かせる場面とでは、聴き手が追うものも変わります。
この曲では、一つの音だけの高さより、フレーズが次の歌い手につながっていく流れを追うと、四人で歌うよさに気づきやすくなります。
バンチャンは歌う力を持ちながら、グループの中では仲間にも役割を分けています。
歌う分量だけで存在感を測るより、任された場面でどんな声を置くかに注目したい歌手です。
「Waiting For Us」―2026年公開の公式プレイリスト・35:34から
言語と舞台に合わせて、声を準備する
「TOP」「SLUMP」を複数の言語で制作した際、バンチャンは、韓国語で慣れた歌をほかの言葉で歌うと、混乱することもあると話しています。
そのため、世界のステージに立つ場面を想定して練習していました。
ハンも、英語の録音ではバンチャンのディレクションが助けになったと振り返っています。
言葉を置き換えるだけでなく、実際に歌える形にする作業を、仲間と進めていたのです。
舞台へ向かう準備については、ハンが、メンバーで身体を伸ばし、声も徐々に動かしていると説明しています。
ステージでは興奮して大きなエネルギーを出すため、その前に声を慣らしておくという考え方です。
本番の勢いだけを見ていると見落としがちですが、曲を歌い分ける活動には、こうした準備も含まれています。
仲間の声を生かすことと、自分の声を選ぶこと
「Roman Empire」では、感情を含んだ滑らかなR&Bの歌と、押し出しのあるビートを組み合わせています。
バンチャンは、グループの制作なら3RACHAの仲間が助けてくれる一方、自分のための曲では、何をしたいのかを見つけるのに時間がかかると話しています。
この曲の歌は、ツアー中の日本のホテルで録られました。
本人によれば、忙しい日程の中でひらめきが訪れ、夜に一気に録音したといいます。
自分の音を探す時間と、声にできる瞬間をつかむこと。
その両方が、ソロの歌を形にしていました。
バンチャンの歌い方は、一つの声質をどの曲にも当てはめるより、曲に応じて力と柔らかさを配り直すものとして考えると理解しやすくなります。
八人の中で必要な声と、一人で曲を通すための声。
その役割の違いを聴き比べることが、彼の表現に近づく手がかりになります。
時期ごとの変化と背景は、バンチャン(Bang Chan)の歌唱変遷でまとめています。







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