ウィンストン・マッコールの声を、腹の底から響くような咆哮で覚えている人は多いでしょう。
Parkway Driveの歌には、体を動かさずにはいられない激しさがあります。
その一方で、長いバラードを歌い、静かな言葉だけで曲を終える姿も、今では彼の表現の一部です。
叫ぶ強さを保ちながら、思い描く曲に自分の声が届くまで、少しずつ選択肢を増やしてきました。
その過程には、歌を習い始めてから、長年の目標を一曲として完成させるまでの時間があります。
初期の激しさと、その外側にあった音楽
Parkway Driveは2003年にオーストラリアのバイロンベイで結成されました。
2005年の『Killing with a Smile』、2007年の『Horizons』を経て、ウィンストンの声はバンドを象徴する存在になっていきます。
当時の曲作りを考える手掛かりが、『Horizons』の「Feed Them to the Pigs」です。
ウィンストンは、この曲では展開を複雑にするより、速さと重さを途切れさせないことを狙ったと説明しています。
初期の強さには、聴き手を休ませずに押し切る設計がありました。
ただし、彼が育った音楽環境は、激しいバンドだけに限られていません。
両親のもとでレゲエやローリング・ストーンズ、ビートルズに親しみ、幼い頃にはミュージカル『ジーザス・クライスト・スーパースター』の歌と舞台にも衝撃を受けています。
後年の大きな舞台や異なる歌への関心を、初期と無関係なものとして切り離すことはできないでしょう。
2012年の『Atlas』では、バンドの音楽にさらに異なる質感が入ります。
「The River」の合唱は、男女二人ずつのゲストが一つのマイクを囲んで録ったものです。
この声をウィンストン一人の変化と考えると、歩みを取り違えてしまいます。
まずバンドの響きが広がり、その中で本人の歌も新たな可能性を探していきました。
『Ire』で増えた、叫びと語りの間の声
2015年の『Ire』の頃、ウィンストンは、それまで使えていたのは高低の叫び声と語る声で、その間の表現が乏しかったと振り返っています。
歌のレッスンを重ねることで、音程と声のざらつきを組み合わせる感覚を学びました。
旋律を歌うための練習は、叫ぶときにどの音を狙うかという意識にもつながっています。
ここで増えたのは、単に穏やかな声ではありません。
音程を持たせながら荒々しさを残す、その中間の選択肢です。
激しい曲にも旋律の輪郭を通せるようになれば、勢いを保ったまま、聴き手が覚えて歌えるフレーズを作りやすくなる。
声の変化が、曲の形を変える入口にもなっていました。
「Writings on the Wall」は、その広がりを作曲の側から示す曲です。
ギターを弾かないウィンストンが、手拍子を使って一人で曲の案を作り、バンドへ持ち込みました。
従来のギターのリフを起点とする進め方に、声やリズムから始める道が加わったのです。
同じ『Ire』の「A Deathless Song」には、クリーンな歌を取り入れたバラードへの試みもあります。
この段階ですでに、後の「Darker Still」へつながる方向は現れていました。
新しい声の登場と、その声を曲全体で自在に使えることの間には、さらに経験が必要だったのです。

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『Reverence』では、歌が曲の進み方を決める
2018年の『Reverence』では、新しく得た声を曲に生かす方法が、よりはっきりします。
ウィンストンが先に歌のアイデアを持ち込み、それに合わせて演奏を組み立てるようになりました。
速い演奏の上に声を乗せるだけでなく、言葉を届けるために楽器側が引く場面も生まれています。
この時期の表現には、大切な人との別れが深く関わっています。
「Wishing Wells」は、喪失の中で行き場を失った怒りを扱う曲です。
一方、最後の「The Colour of Leaving」は、亡くなった家族や友人へ別れを告げようとして書かれました。
同じ悲しみでも、激しくぶつける場面と、言葉を残す場面があるのです。
初期の歌で前に出ていた、演奏とともに聴き手を押し出す力。
それに加えて、声だけに注意を向けさせる時間が大きな意味を持ち始めます。
歌える声の種類が増えることと、その声をどこへ置くかを考えることは別です。
『Reverence』は、後者が曲の骨格にまで入り込んだ転機として捉えられます。
新しい曲を加える一方で、ウィンストンは初期の曲を捨てるつもりはないとも話していました。
ライブでは新旧の曲が互いを生かし、異なる表情を持つからこそ公演を組み立てられる。
変化は、以前の自分を消すためではなく、舞台で使える幅を広げるためでもあったのです。
『Darker Still』で、長年目指したバラードへ
2022年の「Darker Still」は、長い間かなえられなかった目標の実現でした。
ウィンストンは歌を習い始めた頃、メタリカの「Nothing Else Matters」のような曲を歌いたいと講師に伝えています。
『Ire』でも『Reverence』でも挑んだものの、歌う力や曲の作り方、制作時間が追いつかず、実現を見送っていました。
完成した「Darker Still」では、クリーンな声が曲の大部分を担います。
短い箇所に新しい声を差し込むだけでなく、その声で大きな曲を支え続ける。
以前からあった旋律的な表現が、ここでバラード全体を引き受ける段階へ進みました。
制作期間に先の見えない状況が続いたことも、挑戦の規模に関わっています。
ウィンストンは、これが最後のアルバムになるかもしれないという思いから、実現したいことを出し惜しみしなかったと説明しています。
声だけでなく、曲全体の構想をどこまで形にできるかが問われた作品でした。
大きな構想を形にする過程には、メンバー間の摩擦もありました。
アルバムの完成後、バンドは対話を重ね、互いの関係を立て直していきます。
以前に書いた歌詞へ、後になって自分たちの状況を重ねることもあった。
新しい表現に届いた手応えと、それをともに続けるための再出発が、この時期には重なっていました。

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舞台に根づいた旋律と、残り続ける激しさ
2024年9月30日のパース公演では、「Darker Still」がアコースティックギターや弦楽器とともに演奏されました。
長い公演の中にクリーンな歌の時間を作り、その後は「Bottom Feeder」の激しさへ戻っています。
バラードは録音だけの特別な試みではなく、新旧の曲をつなぐライブの一部になっていました。
さらに2025年の「Sacred」について、ウィンストンは初期曲の重さ、「Vice Grip」のような一体感、そして「Darker Still」で広げた要素を結び付ける方向を語っています。
新しい時期へ進むたびに前の表現を置き去りにするのではなく、異なる時代の持ち味を組み合わせる段階に来ているのです。
この頃も、ウィンストンは歌のレッスンを続けていました。
一度できたことを到達点にせず、舞台の規模が変わった後も、声を育てる作業は続いています。
ウィンストンの変遷で印象的なのは、新しい声を得た後も、それを曲にするまでに時間をかけていることです。
音程を扱えるようになること、言葉から演奏を作ること、長い旋律を一曲として成立させること。
それぞれが別の課題でした。
叫びの迫力を出発点に、その声の主が何を伝えるかまで形にしていく。
Parkway Driveの広がりは、ウィンストンが声の選び方を増やしてきた歩みでもあります。
曲ごとの声の選び方は、ウィンストン・マッコールの歌い方で掘り下げています。

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