テイト・マクレーの歌声の変遷|内省的な歌に、踊れる声の自信が重なるまで

テイト・マクレー(2020年掲載、写真:Amy Gardner) シンガー
テイト・マクレー(2020年掲載、写真:Amy Gardner)

テイト・マクレーの歌には、誰にも言えない気持ちをこぼす親密さと、相手を挑発するような強気な表情があります。
ダンスの印象が強い現在の姿にも、自分の気持ちを言葉にするために歌い始めた頃の感覚は残っています。

その歩みを分けるのは、静かな歌から激しい歌への単純な移行ではありません。
歌とダンスをどう結びつけるか、制作でどこまで自分を出せるか、声でどんな人物像を表すか。
作品ごとに、その答えを探してきました。

言葉にしにくい気持ちが、歌になる

テイトはカナダ出身で、幼い頃からダンスを学び、競技やテレビ番組で経験を重ねました。
2017年には自作曲「One Day」をYouTubeへ投稿。
2019年にRCAと契約し、翌年には初のEP『all the things i never said』を発表します。

ただ、最初から自分を優れた歌い手と捉えていたわけではありません。
本人が振り返った歌作りの入口は、うまく話せない気持ちを詩へ書き、それをピアノで歌にすることでした。
歌ってみると、自分の感情を実感できる。
その発見が大きかったのです。

2020年の「you broke me first」では、傷ついた相手を再び受け入れないという気持ちを歌いました。
本人は、単に悲しみを並べるのでなく、自分の価値を認めようとする曲だと説明しています。
「Vicious」とともに、自分の声やスタイルをよく表す作品とも考えていました。

初期を悲しい歌の時期とだけ呼ぶと、この強さが見えなくなります。
自分が傷ついたことを歌いながら、相手との関係をどうするかも言葉にしている。
後に自信に満ちたポップへ向かうための題材が、既に内省的な曲の中にありました。

2022年、自分の言葉を取り戻し、会場へ届ける

フォンダ・シアター公演のテイト・マクレー(2022年3月、写真:Justin Higuchi)
フォンダ・シアター公演のテイト・マクレー(2022年3月、写真:Justin Higuchi)。
画像出典:画像掲載元

ロサンゼルスへ移った後、有名な制作者とのセッションで、テイトは何も言えなくなることがありました。
相手のほうが曲の作り方を知っていると思い、自信を失っていたのです。
グレッグ・カースティンと二人で作る時間は、安心して書ける場所になり、そこから「chaotic」が生まれました。

一方、実際の公演で観客が歌詞を返してくれる経験も、制作を変えました。
本人は、自分が信じていないことをステージで歌うわけにはいかないと感じています。
2022年の初アルバム『i used to think i could fly』には、自分の本音と、会場で歌う楽しさの両方が必要でした。

「she’s all i wanna be」も、最初はピアノのバラードでした。
テイトがもっとアップテンポにできないかと頼み、カースティンがポップ・パンクの形へ変えています。
最初から特定のジャンルを目指したというより、書いた感情をどんな勢いで届けるかを選び直した曲です。

同年3月のロサンゼルス、フォンダ・シアター公演では、踊る曲の合間にステージの端へ座って「One Day」を歌い、軽い高い声を聴かせる場面もありました。
「she’s all i wanna be」ではダンサーと動き、客席の熱を上げています。
歌う場所や体の使い方を変えながら、一つの公演を作っていました。

この時点で、歌とダンスが全く交わっていなかったわけではありません。
ただ、静かに自分を見つめて書くことと、競技で鍛えた動きを見せることを、本人がどう一つの表現として捉えるかは、まだ大きな課題でした。

「greedy」で、軽い声にも強気な役割を与える

2023年の「greedy」を作る頃、テイトの得意な領域はミドルテンポのポップでした。
ライアン・テダーからアップテンポの曲を書くよう促されても、最初は新しい曲調を受け入れられなかったといいます。
本人にとっても、慣れた表現から離れる選択でした。

完成した「greedy」では、軽い高い声へ出入りする歌に、強気な態度が重なります。
テイトはそれまで、感情を表したい十代の自分と、競争心の強いダンサーの自分を、別々のものとして捉えていました。
この曲で、二つの情熱を一緒にできたと話しています。

声を大きく張り上げるだけが、自信の示し方ではありません。
軽く切り替わる歌にも、相手に主導権を渡さない表情を乗せられる。
「you broke me first」で自分を守ろうとしていた歌い手が、今度は自分を欲しがる相手へ、強気に話しかける曲を選んだのです。

同年のアルバム『THINK LATER』に入った「exes」は、アルバムを提出する日に生まれました。
本人によると、書くところから録音・制作までを短時間で進め、翌日には次のシングルに決めています。
考えすぎず、その場で出てきた表情を曲にする余地が広がっていました。

2024年のツアーを振り返ったテイトは、以前とは公演が大きく変わり、長年のダンス経験を少しずつステージへ持ち込めるようになったと話しています。
曲を踊れるものへ変えただけでなく、自分の思い描く公演を作る感覚も育っていました。

2025年、ささやきや語りも歌の見せ場にする

2025年の『So Close To What』は、前作のリズミカルなポップとR&Bを、さらにクラブ向けの音へ磨いた作品です。
音の方向がまとまる一方、歌声は同じ調子だけには収まっていません。

「Sports car」では、ささやく声を取り入れる試みが行われました。
制作に参加したグラント・ブーティンは、テイトが恐れずに試し、何度も変えていったことが作品を動かしたと振り返っています。
本人も、共作を怖がるところから、相手と学び合う場として捉えるほうへ変わっていました。

大きなビートの曲であっても、歌まで大きくする必要はありません。
声を近づけ、相手だけに届くような表情を選ぶことで、踊る音楽に別の緊張感を作れる。
「greedy」の軽い声から「Sports car」のささやきへ、強気な歌の作り方も一つではなくなっています。

「Like I do」には、歌の途中で話すように言葉を入れる場面があります。
曲の中に会話のような声を置くことで、旋律を歌う時間とは違う切迫感を加える。
高い声や長い音だけで見せ場を作らず、言葉の出し方そのものを変える例です。

一方、内面を見つめる歌がなくなったわけでもありません。
踊る曲や大胆な表情が増えたからこそ、その中にある傷つきやすさをどう残すかが重要になります。
初期の本音を歌う姿勢は、新しい音や声の選択を支える土台として続いています。

強気な人物像の奥へ、もう一度戻る

テイト・マクレー(2026年掲載、写真:David Roemer for Variety)
テイト・マクレー(2026年掲載、写真:David Roemer for Variety)。
画像出典:画像掲載元

2025年のデラックス版『SO CLOSE TO WHAT???』へ向かう制作では、ツアー中の感情が新しい曲につながりました。
「Horseshoe」で歌うのは、大きな舞台に立てる幸福と、一人に戻った時の孤独です。
成功すれば自信だけが残る、という形にはなっていません。

ステージ上の自分に「Tatiana」という別の名前を与える考え方は、2022年の時点で本人が語っていました。
普段は内向的でも、人前ではとても自信のある人物として振る舞える。
後から突然作られた設定ではなく、公演を重ねる中で使ってきた感覚です。

2026年にも、テイトは踊りながら歌う時に最も自分らしくいられると語っています。
ダンスを外した場面では、むしろ少し自信が揺らぐこともある。
幼い頃から体に馴染んだ動きが、現在の歌を届けるための居場所にもなっています。

テイトの変遷は、内向的だった人が別人になって終わる話ではありません。
感情を歌にする自分と、大きな会場を動かす自分を、行き来できる表現へ近づいてきた歩みです。

軽い声で強気に歌う、声量を抑えて近づく、話す声を差し込む。
そして一人で抱えている気持ちを再び歌へ戻す。
その選択が増えることで、ダンサーとして知られたテイトの歌にも、異なる角度から触れられるようになりました。

曲の中での声の切り替えや、録音に残した揺れについては、テイト・マクレーの歌い方で掘り下げています。

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